不幸を呼ぶ猫。
『どれだけ見た目着飾っても、目が節穴じゃアンタって一生かわいそうな人だよね。』
「な…っ!何言ってんの、こいつ!」
奈緒は、喋る猫に驚きはしなかった。
驚くよりも先に、彼女の苛立ちが
募り始めたのだ。
『結婚するんだろ?ユウイチと。』
「アンタにそんなこと話す必要はないわ。汚い猫ね、近づかないで!」
猫は不気味に笑った。
気味が悪かった。背筋が凍えていた。早く逃げ去りたかった。
それでも、奈緒は目はしっかりと猫を見つめていた。
『ねぇ、アユミってあんたの親友?ユウイチって、あんたの彼氏?』
「何言ってんの、こいつ!」
綺麗に着飾った奈緒の姿は、
怒りと震えでまるで妖怪だった。
『人って醜いよね。裏切り裏切られ、結局最後には絶望しか残さない。
ユウイチも、そうだったりしてね。』
猫は挑発するように笑うと、
奈緒の手の届かない塀に飛び乗った。
『そんなに怒らないでよ、お姉さん。ね、ユウイチの家に行ってみれば?』
あざ笑いながら、猫は姿を消した。