不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「颯真、今日も悠里だってノート持ってるよ。
悠里に見せてもらいなよ。」
悠里も見てるのに。
わたしは、こそっと颯真に耳打ちした。
颯真と悠里に気をきかしたつもり。
だけど、颯真はわたしを無表情でじっと見た後、
ふいっと顔をそらすとノートに視線を落とした。
「ちょっと颯真……」
「いいだろべつに!
昔は明里のやつ写してたんだから。」
それは昔の話じゃん!!
そう言いたかったけど、ぐっとのみ込んだ。
悠里はわたしと目が合うと、ふっとわたしに笑いかける。
颯真は悠里が好きなんでしょう?
ようやくわたしが次に進もうって。
そう思ってるのにーー
その颯真の気まぐれな態度は、わたしの気持ちを簡単に揺るがしてくるんだよ。
「知らないでしょう……?」
「はぁ?」
気まぐれな颯真にも、思い通りにいかないわたしの心にも、なんだかむしろ腹がたってきてーー
「悠太くん!
わたしが教えてあげるよ。」
ーー…わたしは、前に進むんだ。
もう、颯真に惑わされたくない。
わたしは悠太くんの机の前に座ると、悠太くんのペンケースからシャーペンを取り出した。
「あ!勝手に取るなよ明里!」
「え?あ!ごめん!!」
「ははっ。うそ。冗談だよ。」
楽しそうに笑う悠太くんに、わたしもふふっと笑ってしまった。