不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~





「颯真、今日も悠里だってノート持ってるよ。
悠里に見せてもらいなよ。」







悠里も見てるのに。
わたしは、こそっと颯真に耳打ちした。







颯真と悠里に気をきかしたつもり。







だけど、颯真はわたしを無表情でじっと見た後、
ふいっと顔をそらすとノートに視線を落とした。








「ちょっと颯真……」





「いいだろべつに!
昔は明里のやつ写してたんだから。」





それは昔の話じゃん!!







そう言いたかったけど、ぐっとのみ込んだ。






悠里はわたしと目が合うと、ふっとわたしに笑いかける。








颯真は悠里が好きなんでしょう?





ようやくわたしが次に進もうって。
そう思ってるのにーー





その颯真の気まぐれな態度は、わたしの気持ちを簡単に揺るがしてくるんだよ。






「知らないでしょう……?」





「はぁ?」





気まぐれな颯真にも、思い通りにいかないわたしの心にも、なんだかむしろ腹がたってきてーー





「悠太くん!
わたしが教えてあげるよ。」





ーー…わたしは、前に進むんだ。






もう、颯真に惑わされたくない。






わたしは悠太くんの机の前に座ると、悠太くんのペンケースからシャーペンを取り出した。





「あ!勝手に取るなよ明里!」







「え?あ!ごめん!!」







「ははっ。うそ。冗談だよ。」





楽しそうに笑う悠太くんに、わたしもふふっと笑ってしまった。




< 104 / 190 >

この作品をシェア

pagetop