不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「ねぇねぇ!榎本さん!」
「え?」
それは、中学2年の頃。
他のクラスの女の子達に呼び止められた。
「ねぇ、榎本さんっていつも暮野君と一緒にいるよね?」
「颯真?」
「そう。ほら、今だって呼びすて!
もしかして…彼氏?」
「えぇっ!まっさか!違うよ!」
"違う"
その言葉の瞬間に、わたしの胸の奥がぎゅぅっとなって。あれ?って思ったのと、もしかして好きなのかな?って思ったのはほぼ同時だった。
思わぬところで気づかされてーー…
その気持ちを封じられてしまうのも
思わぬところだった。
「そっかぁ!よかった!」
「え?」
「や、だって…ちょっと暮野君のこといいなぁって思ってたから。」
「あー…そうなんだ。」
「それに、榎本さんと暮野くんってなんかつり合わないっていうか、違和感っていうかーー」
「ちょっとマリ…!!」
……あ。って言う顔をしてわたしを見るその子達。
その表情を見てたら、べつに悪気があったわけじゃないことがよくわかる。
ただ、彼女じゃなかったことに安心して、つい本音が出てしまっただけ。
「ご、ごめんね榎本さん…!
じゃぁ……」
それを肯定するように、その子達はそそくさと走ってわたしの前からいなくなる。
「そっか……
そりゃ私じゃ無理だよね……。」
もともと感じていた劣等感が、
さらに強くなって。
ーー…さらにわたしは本音に蓋をした。