不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「はいはい。
颯真、あんまり明里をバカにすんなよ。
怒るぞ。」
わたしと颯真のシートの間から、にゅっと手が延びてきて。
「貸して。明里。」
後部座席に乗っていた彼から、簡単に手に持っていた日焼け止めを奪われる。
その手は、振り返らなくても悠太くんのものだって分かった。
というか……
男の子でも、日焼け止めって塗るものなの?
「うるっせーな。
お前、明里に甘すぎ。
つか、男が日焼け止め塗んなよ。」
「幼馴染みだからって、お前が生意気言いすぎなんだよ。
それ、明里以外の女の子なら嫌われてるからな。」
まぁ……たしかに。
わたしはきっと心が広いと思う。
というか…………
颯真は、意地悪なだけじゃないから、きっと好きになった。
優しいところも知ってるから。
本人には、口が裂けても言えないけど。
「べつに……
他の誰でもなくて、明里に嫌われてないからそれでいい。」
「…………え」
驚いて、おやつのポッキーをくわえる颯真を凝視すると、
「ん?」と首をかしげて。
「食う?」となんでもないようにポッキーをわたしに差し出した。
「……いらない!」
そうやって、深い意味もないのに、そんな言葉を言う颯真がーー
心から、憎いと思った。