不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「プールだぁー!!
よし!!行こうみんな!!」
大きな浮き輪を片手に、佐奈はグループ隊長のように大きな声をあげると、真っ先に水の中へ飛び込んだ。
勇ましいというか、なんというか。
ビキニ姿で髪をアップに上げている佐奈は、回りの人が目をやるくらい美人なのに。
佐奈の恋愛沙汰をあまり聞いたことがないのは、見た目とは裏腹のこのサバサバした性格のせいなのかもしれない。
「さ、佐奈ちゃんすごいね…。
一人で行っちゃったよ…。」
水玉模様の水着の上に、白いパーカーを羽織った悠里は、やっぱりどこか恥ずかしいのか、水着を隠すように体の前で服をぎゅっと握っている。
そういうわたしも、水着の上から上着を羽織ったまま。
「2人とも、それ着たまま入るのか?」
悠太くんの言葉に、少し手がギクッと震えて。
「バカ悠太。
そういうことはあんまり男から言うもんじゃねぇんだよ。」
颯真がすかさずそう言うと、……あ。という顔をして、気まずそうに悠太くんは顔をそらす。
わたしと悠里は顔をしばらく見合わすと、観念したようにふふっと笑った。
「ううん。
そろそろ脱ぐつもりだったから大丈夫。」
いくら男友達の前だからって、水着姿を見せるのは躊躇しちゃうもの。
思い切ってパーカーを脱ぐ。
「とりあえず、追いかけないと後で怒られそうだな…。」
「そうだよね…。」
わたし達の前を、悠里と颯真が歩き出す。
2人の姿を後ろから眺めてると、颯真が悠里を見て何か口を開いていた。
その後、悠里は嬉しそうに微笑んで。
あ……水着のことかな……。
なんて、そんなことを考えてた。
後を追うように足を踏み出すとーー
「待って。明里。」
「え……?」
悠太くんに、手を後ろへ引っ張られて。
「……こっち。」
ーー颯真の姿も、見れなくなった。