不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「どうせ鈍感だから気づいてねぇと思った。
ここは、オープン当初からナンパスポットとも言われてんだよ。
1人で歩いてる女に、よく男が声かけてんだろ。」
「そ、そうだっけ……」
たしかに、そういう場面を見たような……。
颯真はわたしの腕を掴んだまま、まだ呆れ顔のままわたしを見下ろす。
「水着姿っての、サマーマジックで二割増に見えんだから気を付けろよな。」
「ちょっ……なにそれ?バカにしてる?」
「……くくっ…ははっ!」
「………………」
颯真は自分の言葉に吹き出して笑う。
その笑顔に、わたしも頬が緩んでしまうんだから、まだまだわたしは未熟。
だからーー…………
「……明里?」
颯真から視線をそらし、悠太くんの顔を頭の中に思い浮かべて、自分に言い聞かせる。
わたしがこれから見て、そばにいたいと思うのはーー
もう目の前の幼馴染みの彼ではないってこと。
「……行こう。颯真。
悠太くん達、待たせちゃうよ。」
「…………………」
さりげなく颯真の手から逃れると、わたしは歩き出す。
颯真はまた私の隣に並ぶけど
掴まれていた腕が、どこか熱いと感じてしまうのがーー
わたしの勘違いであればいい。