不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「行こう。悠里。
奢らされるの勘弁だからな。」
「あたし後ろだからね?
颯真くんの操縦の手にかかってるよ。」
「俺、ゴーカートとか得意だぜ?」
「や、それ関係ないよー!」
2人は、笑いながら、なんでもないようにボートのほうへ進んでいく。
あれ……?
気のせい……?
わたしが不思議に思って2人を見つめていると、悠太くんがわたしの腕をとった。
「明里?どうした?行こうぜ。」
悠太くんは何も感じなかったのか、いつも通りわたしに言う。
もう一度2人を振り返ると、もうボートに乗ろうとしていて。
先に乗った颯真が悠里の手をとって軽く引っ張ると、悠里は颯真の後ろに乗り込んだ。
そのときふいに、颯真と目が合う。
「……!」
「俺が勝つけど、いい?明里。」
そう言って、颯真はにやっと笑う。
「ま、負けないし…!!」
わたしはさっきまで感じていた違和感を振りきると、
悠太くんとボートに乗り込んだ。
そして、スライダーの係のお兄さんが、
"しっかり持ち手を握っててくださいよー"
と言いながら、ボートを後方から軽く押す。
それと同時に、スピードを上げて滑り始めるスライダー。
そして………
「ちょっ……待って待って……!!早い……!!」
わたしは、叫ばずにはいられないほどびびりまくり。
「おぉー!!!」
と楽しそうに声を上げる悠太くんとは裏腹に、
わたしはぎゅっと持ち手に捕まった。