不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
悠里の好きなオレンジジュースを一本買い、
座り込んでる悠里に近づく。
「ゆうーー」
声をかけようとしたとき。
悠里の髪は、まだ濡れていて。
ウォータースライダーのときに、一気に水をかぶったんだと思うんだけど……
うつ向き加減による髪で、悠里の表情も見えづらい。
だけど、髪の隙間から見えた頬がーー光って見えた。
プールの雫……?
それとも……
涙……?
「ーー…あ……
……明里!
あたし達勝っちゃった!
颯真くんが上手だったからかな!」
わたしが声をかけるより先に悠里はわたしに気づくと、首にかけていたタオルで頬と髪をふきながら、わたしに笑顔を向ける。
もう、悠里の表情は、いつもの彼女に戻っていた。
「ジュース、勝ってきてくれたの?」
「あ……うん……」
ありがとう、と、悠里はジュースを受けとる。
それを両手で掴むと、また口を閉ざした。
2人の違和感とか……
さっきまでの悠里の表情とか……。
なんの確信もあるわけじゃなかったし、むしろその違和感の理由もわからない。
そもそもその違和感自体、わたしだけの思い込みの可能性もあって……。
実際、悠太くんは何も感じてなかったみたいだったから。
何も言えず、わたしが悠里の横に腰を下ろすとーー
「……明里。」
「ん?」
悠里は、真剣な瞳をわたしに向けると……
ふっと表情をやわらげて。
「あたし、もっともっと颯真くんが好きになったよ。」