不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~



「え……?」




「颯真くんね、すごく優しいの。

誰よりも相手のこと想ってて……
でも、とても不器用で。」





「………………」






「誰よりも人を愛する気持ちを持ってるのに……

でも、臆病なの。」





"もっともっと颯真くんを好きになった"





そう言ってたはずの悠里。





だけど、不器用とか、臆病とか……。
言ってることは、矛盾してない……?





「不器用とか、臆病とか……
それ、マイナスなことじゃないの?」





そう言ったわたしに、悠里はふっと笑って。





「それだけ相手のことが好きってことでしょ?

そんな風に一途に想える気持ちは……
素敵だと思う、あたし。」





そして、その"相手"は……




颯真が言ってた、"大切だって思える人"……?






悠里はーー
何かを聞いたの?






「ゆうーー」





そのときーー





「……っざけんなよ!!!」





ガターン!!と、何かが倒れる音が聞こえて。





その音に驚いて振り返るとーー





座りこんだ颯真と、立ち上がって拳を握る悠太くん。





そしてーー





近くで倒れているゴミ箱と、悠太くんが颯真に買ったはずの缶ジュースが、そばに転がっていた。





「え……なに……」





何事かわからず、困惑するわたしの元に、悠太くんは近づいてくる。





「悠太くん……?

どうしーー」






「来て。明里。」





「えっ……!?」





見たこともない険しい表情。





悠太くんはわたしの手を掴むと……





「痛っ……」





今までにない強い力で、
強引に歩きだした。



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