不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
ーーーーー………
「ちょっ……と!!
痛いってば悠太くん!!」
何度、名前を呼んだかもわからない。
「………………………」
「聞いてる…!?
悠太くんってば…!!」
ズンズン進み続ける悠太くんに、
何度目かの声で、ようやく足を止めてくれた。
「はぁっ……はぁっ……」
悠太くんは早歩きだったかもしれないけど、身長の違うわたしは軽く小走り状態。
息も絶え絶えになった頃、悠太くんははっとしたようにわたしの方を振り向いた。
「……ごめん。明里。」
そう言いながら、悠太くんはわたしの手を離さない。
辺りを見ると、どこまで歩いて来たのかーー
ここは外れた一画なのか、回りにプールもない、閑散としたところ。
だけど、木々は多くて、自然が作る日影のおかげか、暑いとは感じなかった。
「どうしたの……?」
あんな風に声を荒げる悠太くんも、うつ向く颯真も知らない。
いつも、仲が良かったのに。
「俺、ズルいかもしれない。
本当のこと知ったら、あいつとも、元に戻れないかもしれない。
だけど…………」
そう言って、悠太くんはわたしを見る。
その目は、いつも微笑みながら見てくれる、普段の悠太くんではなくて。
真剣な瞳で、掴んでいたわたしの手を引っ張ると、
ーー…私の耳元に口を寄せた。
「ゆずりたくないものだって、ある。」