不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~




ーーーーー………




「ちょっ……と!!
痛いってば悠太くん!!」






何度、名前を呼んだかもわからない。





「………………………」





「聞いてる…!?
悠太くんってば…!!」





ズンズン進み続ける悠太くんに、
何度目かの声で、ようやく足を止めてくれた。





「はぁっ……はぁっ……」





悠太くんは早歩きだったかもしれないけど、身長の違うわたしは軽く小走り状態。






息も絶え絶えになった頃、悠太くんははっとしたようにわたしの方を振り向いた。






「……ごめん。明里。」





そう言いながら、悠太くんはわたしの手を離さない。






辺りを見ると、どこまで歩いて来たのかーー





ここは外れた一画なのか、回りにプールもない、閑散としたところ。
だけど、木々は多くて、自然が作る日影のおかげか、暑いとは感じなかった。





「どうしたの……?」





あんな風に声を荒げる悠太くんも、うつ向く颯真も知らない。




いつも、仲が良かったのに。





「俺、ズルいかもしれない。
本当のこと知ったら、あいつとも、元に戻れないかもしれない。
だけど…………」





そう言って、悠太くんはわたしを見る。





その目は、いつも微笑みながら見てくれる、普段の悠太くんではなくて。






真剣な瞳で、掴んでいたわたしの手を引っ張ると、






ーー…私の耳元に口を寄せた。






「ゆずりたくないものだって、ある。」




< 135 / 190 >

この作品をシェア

pagetop