不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~




ーーーー




少学校低学年の頃。







「え……!?
颯真、明里ちゃん!
何その傷……!?」





学校から帰った俺と明里の姿を見て驚く俺の母親の姿は、もう日常茶飯事だった。






「また明里ちゃんに助けてもらったの……!?
もうっ……
これ以上、明里ちゃんところに迷惑かけられないのに……!!」





「大丈夫だよー!颯くんママ!
わたし、強いからいつも勝てるもん!!」






そうピースを出して明るく笑う明里の後ろに、俺は泣きはらした顔で隠れていた。







あの頃の俺は、いつもうつ向いて歩いてるような男の子で、弱虫で、泣き虫で。







よく、近所の子にいじめられては泣いていた。







それを、助けてくれるのはいつも明里で。







今思うと、そんなひ弱なオーラを出してるヤツは、そりゃいじめの対象になるだろうと思うし、
お前男だろ……!!
って過去の自分に喝を入れてやりたいくらい。







俺の母親も、幼馴染みの子がいつも傷をつけて帰って来れば、明里のところの両親にも顔向けできなかっただろう……と思う。






でも、俺たちがさらに幼い頃から家族ぐるみの付き合いで、明里のこの持ち前の明るさから、家族間でトラブルになったことは一度もなかった。






その辺りでも、俺は明里を含めた明里の家族に、すごく助けられていたんだと思う。





「ねえー?颯真。」





ある日、俺の傷を消毒しながら、母親が言った。






「明里ちゃんね、いつも笑ってるでしょう?」





「うん……」





「でもね、表面上は元気いっぱいでも、心の中では違うかもしれないよ?
泣いてるかもしれないよ?」





そんな心の中を読み取れる子になってほしい、と、
母親が微笑みながら言ったのを今でも覚えてる。





「明里ちゃんは、颯真と違って女の子なんだから。
いつか、颯真が明里ちゃんを守ってあげられるようにならないと。」






きっとそれが、"強くなれ"って意味だと、
こどもだった俺でも、理解はできていた。




< 141 / 190 >

この作品をシェア

pagetop