不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~




だけど、臆病で弱虫な俺の性格は、すぐに変わることなんてできなくて。






ある日、また近所のヤツらに手さげをとられ、それを公園の木の枝にくくりつけられた。






今思えば恥ずかしいけれど、木登りが怖くてできない俺が立ち往生して泣いてたとき、それを明里が助けてくれた。






木登りをして、手さげを手に持って、地面にあと1歩で着くという時。






最後に手を滑らせて、明里は尻餅をついた。





「だ、大丈夫……!?」






声をかけるしか出来ない俺に、明里はにこっと笑って。






「大丈夫大丈夫!
手さげ、よかったね!」





そう言って、俺に手さげを渡してくれる。





「手汚れちゃったから、わたし、手洗ってから帰る!
颯くん、先行ってていいよ!」






笑いながら言う明里に、俺は公園を出ようとしたけど。






ふと、明里がついさっき、手さげを取り返した後、尻餅をついてた時を思い出して。





そのとき手を地面についていたから、怪我をしたのかもしれないと、俺は出口に向かっていた足を止め、引き返した。






近場の蛇口に着くと、明里は手を洗っていて。






そしてーー






涙を拭ってた。






"いつか、颯真が明里ちゃんを守ってあげられるようにならないと。"






その母親の言葉を思い出してーー





もう、明里を泣かせてはいけない。強くなりたい。
って、この時強く、そう思ったんだ。






本当の明里の涙を見るまで、決意できないなんて、
ほんと未熟で愚かだったと思うけどーー






でも、この時からすでにーー






"颯くん"






そう呼ぶ明里の声が好きだと思った。



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