不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
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時は経ち、中学1年生の冬。
「颯真っ!
マックのタダ券あるんだけど!
行かない!?」
「お前またかよ。太るぞ。」
「いいのっ!
昇降口で待ってるからね!」
別のクラスであることにも関わらず、明里は言いたいことだけ言いにくると、一目散に退散していった。
中学生の頃は、高校生の今よりもっとーー
嵐のような女だった。
「なぁ。お前、榎村さんと仲いいの?」
そう言ってきたのは、中学で出来た友達。
「ま、幼馴染みだな。」
「まじで!?
いいなぁ颯真……うらやましいわ。」
「は?なんで?」
「なんでってお前……可愛いじゃん。
なんか、無邪気で楽しそうで。
お前近くにいすぎて感覚マヒしてんじゃね?」
「……なんじゃそら。
無邪気で楽しそうな奴なら、他にもいっぱいいるだろ。」
中学の頃から、明里はひそかに人気だった。
だから、俺とあいつの幼馴染みの関係をこうやってうらやましがるやつも、ちらほらいた。
それはべつにかまわなかった。
たしかに明里は可愛いと思ってたし、人気があるのも頷けた。
だけど俺が気にくわなかったのはーー
「お前、明里が好きなのかよ?」
「は!?
……なんで?バレてた?」
そう笑う友達に、心底腹が立つ。
そうやって簡単に、明里を好きだというやつ。
俺とあいつが話してる姿を見てるくらいで、
明里の何を知ってんの?
明里のどこを好きになるんだよ?
無邪気で楽しそうで可愛い?
そんなやつ他にもいっぱいいるだろ。
そうやって、なにも知らないくせにーー
簡単に明里を好きだと言うやつが、
心から嫌だった。
今思えばーー
俺の小さな独占欲で、
ただ単に子どもだっただけかもしれないけれど。