不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
幼なじみだから、誰よりも明里のことを知ってる。
無邪気で楽しそうで可愛い。
決してそれだけではなくて、芯の強さと、優しさを持ってる明里。
それを1番知ってるのは俺だって、それだけは自信があったし、そのこと自体も、誰にも譲りたくなかった。
一番明里に近い男は俺で。
明里にとっての俺も、そういう存在だって。
……きっとそう、過信していたんだと思う。
ーーーーーー…………
それが俺の中で覆ったのは、中学2年の冬。
「さっみぃ………」
放課後。
雪の降りそうな雪雲の中、最後の大会に向けたサッカーの練習。
いわゆる、引退試合。
キャプテンを任されていた俺は、顧問に呼ばれて、職員室に向かっていた。
グラウンドから出て、下駄箱で上履きに履き替え、職員室までの寒い廊下を進む。
その中でーー
「えぇ…!!
明里の憧れの人のタイプって、そういう人だったんだ!!」
「や、所詮、憧れだよ……!?」
比較的人の少なくなった廊下で、女子達の話す声は丸聞こえ。
聞き覚えのある名前と声にーー
俺の足は止まった。