不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
ふと目をやると、明里のクラスの扉が少しだけ開いていて。
そこから、明里を含めた数人の女子が、円を描くように机に座ってしゃべりこんでいるのが見えた。
「でもさ、一歳しか違わないのにさ、先輩ってなんかこう……
大人に見えるんだよねー……」
いわゆる、女子トークってやつだったんだと思う。
(明里もこんな話するんだな……)
いつも学校帰りにどこかに寄っては、昨日のテレビがどうだとか、お笑い芸人がどうだとか。
最近見た映画が感動して泣いたとか。
俺とはそんな話ばっかりだったから、自分にとっては新鮮で。
まぁ……
男友達、ましてや幼なじみ相手に恋愛トークなんて誰でもしないんだろうけど。
「でもやっぱり先輩って、憧れで終わるよね。」
友達同士で、盛り上がる会話。
これ以上、聞いてしまうのはどうかと思ってーー
俺は、明里のクラスを通り過ぎようとした。
……だけど。
「あっ!颯真くんって結構いい線いってない??
あたし、結構好きなんだけど……。」
「あ。暮野くん?わかるかも。
みんなに優しいっていうか、別け隔てないっていうかね。
わたしみたいな素朴な女子でも、笑って話してくれるもん。」
明里の声ではない、違う女子から、急に俺の名前が出てきてーー
思わず、足が止まった。