不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「でも暮野くん、モテるんでしょ?
この前も、上の先輩から告られてたって聞いたよ。」
「そりゃあの性格じゃぁ、ほっとかないよねー。」
「でも、彼女いないんでしょ。
なんでかなー。」
俺がそばにいるとも知らず、繰り広げられる会話。
悪口とかではないけれどーー
ほめられていても、この手の話題は、少し居心地は悪い。
気づかれないうちに、退散しようかと思った。
そのとき。
「ねぇ、明里って、暮野くんの幼なじみでしょ?」
「えっ……!?」
しばらく声を発してなかった、驚いたような明里の声が俺にも届く。
退散したほうがいいーー。
その警告音にも関わらず、俺の足は動かなかった。
「あっ、そうだよ!
明里、よく放課後に暮野くんとこ行ってるじゃん!
仲いいじゃん。
それさ……何もないの?」
「な、何もないって、なにが……!?」
おどおどしたような、明里の声。
同時に、茶化すように笑う、回りの友達の声。
この話題の流れだと、俺の聞きたくない言葉が、明里の口から出るかもしれないのに。
どこか、興味が引かれるものがあったんだと思うーー
そんな俺の本心が、足を地面に固定したみたいに、びくとも動かそうとしなかった。
「あたし達に隠してるだけで、
暮野くんと付き合ってるんじゃないのー?」
「いやいや、そんなんじゃないよ……!」
――――……このことが、俺をあとで、
後悔させることになるなんて知らずに。
「えぇー!!
暮野くんみたいな男子、彼氏に出来たとしたら自慢だよねー!」
「ーー…え?」
「わかるわかる!
デートとかで、隣歩いてくれてたらさ、もう優越感に浸れるっていうか!」