不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
悠里はよく、俺を優しいって言った。
だけどそんなの、本当に好きな子の前ではなんの役にもたたなくて。
その優しさで、明里の心のなかの俺を大きくすることだってできない。
いくら悠里といても。
些細な言動から、悠里の気持ちが俺に向けられてるって感じるときも。
今ごろ明里は……って、そんなことを考えてしまう自分が、心底嫌で。
でもいくらそんな自分に自己嫌悪を抱いてもーー…
俺の気持ちは、何も変えられなかった。
だからーー
ウォータースライダーにたどりつく直前。
ーーーーーー
「…………颯真くん。」
階段を上る足を止め、悠里は俺を見上げた。
胸の前で、手をぎゅっと握り合わせて。
「あたしね……
颯真くんに、言いたいことがある……」
「…………………」
「だから……
今年の夏祭りーー」
「ーーごめん。」
自然と、口から発せられた言葉。
何を言おうとか、それを頭で考える前に、俺の口が勝手に動くようで。
「夏祭りは……
必ず一緒に行ってたヤツがいるから。」
「…………。
一緒に"行ってた"人?」
「……うん。」
「そんなの……去年までの話でしょ?
いつまでも、同じことを繰り返す意味なんかーー」
きっと、夏祭りに行く・行かないの話だけではないと、悠里も気づいてた。
少なからず、"言いたいこと"に関わる返事が、今から始まってることを、悠里も感づいてたんだと思う。
だからーー…
「ごめん。
俺、言い方間違えた。」
「え……?」
「俺が、一緒に"行きたい"だけなんだ。」