不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「……………………」
その言葉に、悠里は手の力も抜けたように、ふっと視線を下ろして。
しばらくしてーー
「ふふっ……」
困ったように笑いながら、顔を上げた。
「颯真くんって、不器用だよね。」
「……え?」
「不器用だけど……真っ直ぐなの。
颯真くんが、今の苦しい気持ちから逃れられる手がすぐそばにあるのにーー
いくら差し伸べても、振り払われちゃう。」
「悠里……?」
悠里の言葉の真意がわからず、思わず見つめ返すとーー
悠里は、バツが悪そうに笑った。
「あたしね、気付いてたよ。
颯真くんが、明里を好きなことくらい。」
「…………悠里。」
「あの課外キャンプの日、颯真くんを好きだなって思ってから、あたしだって颯真くんのこと見てた。
だから、その颯真くんが、誰を一番目で追ってるかなんて、すぐにわかった。」
「……………」
「だけどあたし、颯真くんの心ん中に入り込もうとするの、やめなかったよ。
悠太くんが、明里を好きだって聞いて、悠太くんがんばれ!って思ってた。
明里にも、悠太くんのいいところ、いっぱい教えた。
悠太くんと明里の距離が近づくたび、嬉しかった。
……悪い女でしょ?」
そう自嘲気味に笑う悠里は、どこか悲しそうでーー
「でも、結局勝てなかったんだなぁ……」
悠里は俺から目をそらすと、
今度はウォータースライダーのある頂上に目を向けた。
「だから、このウォータースライダーだけは、明里に勝ちたい。
任せるからね!颯真くん!」
悠里はそう明るく言うと、再び階段を上り、俺を追い越す。
課外キャンプの日から、見ることの増えた悠里の横顔。
それがいつもと違って、本心だけではなくてーー
強がりもあるとわかっているから……。
「……ごめん。ありがとな。悠里。」
「……っ……うん…!」
俺は、悠里の隣に並んだ。