不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
それからーー
ウォータースライダーを滑り終えて。
悠里に言われた通り、見事勝利を勝ち取って。
全身びっしょり濡れて、顔の滴を拭う悠里の背後で、
明里達のボートが下りてきて、着水したのが見えた。
「ふふっ……初めて明里に勝てた。
ざまぁみろっ」
そう笑いながら言う悠里の、端から見たら嫌味にとれる言葉もーー
俺からしたら、精一杯の強がりにしか聞こえなかった。
「ーーー………」
「俺、今まで悠里といた時間、楽しかったよ。
それは本当。」
「…………………」
「あと…………」
「………?」
「俺が明里を好きだって気づいた後も、明里と仲良くしてくれて……ありがとな。」
自分の好きな相手が、違う人に気持ちを向けているってわかったとき。
その辛さは俺にも十分わかるからーー
「ふふっ……本当、颯真くんってズルい。
女心、すごいわかってる。
そんなこと言われたら、これから明里に嫌味の一つも言えないよ。」
それから、悠里はふっと表情を和らげた。
「あたし、悠太くんは大事な友達でもあって……
大事な幼馴染みだから。」
「……うん。」
「だから、悠太くんの気持ちも応援するし、颯真くんの気持ちも、しょうがないから応援したげる。
でも、もし颯真くんの気持ちが、明里に届かないとしたら……
あたし、また颯真くんの心ん中、入ろうとするから。」
「ふ……ははっ。
攻めてくんじゃん。」
「ふふっ……もちろん。
だからーー…」
「……ん?」
「友達としてでいい。
これからも、あたしと"普通に"過ごしてください。」
ほんの少しだけうつ向いて言う悠里に、俺が返す言葉は一つしかない。
「……もちろん。」
安心するように笑った悠里は、今日一番の笑顔だった気がした。