不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
ーーーーー…………………
わたしは、悠太くんと別れ、歩いてきた道を戻っていく。
"俺……今日はもう帰るな。
ごめん。
颯真達には、用事思い出して帰ったって、伝えといて。"
「そんな見え透いた嘘……
みんな気づくに決まってるのに。」
悠太くんは、それ以上わたしと話すのを拒むように、
踵を返して帰っていった。
悠太くんの、複雑そうな表情が、脳裏から離れない。
とぼとぼと歩きながら、悠太くんの言葉を思い出す。
「……………………」
颯真は、悠里に告白はしない。
颯真は、悠里が好きじゃなかったの?
悠太くんは、それを知っててーー
わたしに嘘をついたの?
「どうして…………」
悠里が颯真を好きだということは、もう本人から聞いていた、周知の事実。
その上でーー
悠太くんから、颯真が悠里に告白するらしいと聞いたから、わたしは悠太くんを見ると決めた。
徐々に、悠太くんと過ごす放課後も増えて。
少しずつ、悠太くんのことを知れて。
悠太くんの存在に救われてた。
前に進めてると思ってた。
でもーー……
「もう……意味わかんない……。」
嘘をついたという悠太くんも。
悠里を好きじゃないという颯真も。
それなら、颯真の大切な人って誰……?
それを知りたいような、知りたくないような……。
もう頭の中もぐちゃぐちゃで。
わたしの気持ちもぐちゃぐちゃで。
「―――――……………」
だけどーー冷静に考えてみれば。
颯真の好きな人が悠里じゃないとしたって、わたしにとってはなにも変わらない。
わたしの気持ちが颯真に届くことはないからーー
なにも、変わらないんだ。
ただ、颯真の好きな人の対象が変わったというだけ。
わたしが彼を想ってもどうしようもないことは、
同じなんだ。
そう思った瞬間ーー
また、涙が溢れた。
「ーーー……明里!?」
その声に、びくっと体が震える。
それと同時に……
わたしの肩に力強い腕が回って。
わたしはいつの間にか、顔を伏せて座りこんでた。
「どうした……!?
悠太は……!?」
「颯……真……」