不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
颯真は、しゃがみこんでいるわたしと同じ目線になるように腰をかがめると、わたしの顔をのぞきこむ。
幼い頃から知っている颯真の顔が、
わたしに大きく近づいてーー
そのくっきりとした目が、わたしの表情をとらえた瞬間、さらに大きく見開かれた。
「……なんで泣いてんだよ。」
「これは……なんでもない。
ちょっと悠太くんとケンカしちゃって。」
涙を拭いながら、わたしは強がって笑顔を見せた。
まだまだ頭の中は混乱していて。
颯真に聞きたいことはたくさんある。
颯真の本当の気持ちはどこにあるの?
わたしが颯真を想ってても、無駄なんだよね。
所詮、颯真にとってわたしは"幼なじみ"。
わたしが辛い気持ちになるだけなんだよね。
だけど、颯真が好きな人は悠里じゃなく、他に大切な人がいるって知った今でも、それを聞くことが怖くて……
自分に無関係だって分かってるから、結局わたしは、何も言い出せないんだ。
「……あいつは?どこ。」
「……用事があるって帰ったの。
ごめん……。」
「……用事?
てか、なんで明里があやまんだよ。」
「急にいなくなって、怒ってるでしょ」
「べつに怒ってねぇよ。
というか、強引に明里を引っ張っていった悠太にならともかく、明里に怒る理由がねぇだろ。」
表情を崩して颯真が言うから、ホッとした。
「ほかのみんなは?」
「違うフロアで、お前らのこと捜してる。
あ……ちょっと待ってろ。
とりあえず、あいつらに明里と会えたって連絡するから。
お前もさ……携帯くらい出ろよな。
無駄な心配かけさせんなよ。」
「う……ごめん……」
ごもっともで、わたしは謝罪の言葉しか出てこない。
颯真が、携帯取り出して簡単に操作すると、耳に当てた。
「あ……佐奈?」
電話でわたしを見つけたことを話し出す。
その颯真の横姿を見ていたときーー
ふと、颯真の腕に目が止まった。
擦り傷をおったのか、綺麗に貼られたバンソウコウ。
「ーー…あぁ……うん、わかった。
悠里にも伝えといて。」
ーー…ピッ
通話終了を示す、携帯の電源ボタンを押した颯真がわたしに向き直るのとーー
わたしが、颯真の腕に貼られたバンソウコウに触れたのは
ほぼ同時。
「……ケガ、いつの間に?」
「あぁ……。ウォータースライダーの後、ちょっとな。
悠里が貼ってくれた」
「……そっか。」
「あいつら、安心したから先帰るってよ。」
「えっ……?」
「送ってく。もう帰るだろ。」