不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「……悠太くん?
なんで!?
もうどうでもいいじゃんあんなやつ。
正直あたし、悠太くんのしたこと納得いかないよ。」
佐奈は苛立ちを隠しきれないのか、お弁当に運ぶ佐奈の手が荒々しくなる。
「結局、自分に都合が良くなるように事を仕向けたんでしょ?
颯真くんと明里が、両想いなの知ってて…。
お互いの誤解が、すれ違いを生んでること知ってて。
それなのに、颯真くんが悠里に告白するつもりらしいなんて、嘘をついた。
明里が颯真くんを諦めるように。
そんなの最低だよ。
ただの自分勝手じゃん!!」
「……………………」
「人の気持ちの嘘を語って。
そういうズルいやり方、あたし一番嫌なの。
腹立つ!!」
やけになっておかずを口に詰め込んだ佐奈は、空になったお弁当の蓋を勢いよく閉める。
ガチャンと音を立てた佐奈のお弁当とは対称的にーー
わたしのお弁当は、まだ半分以上残ったまま。
たしかに、悠太くんのしたこと、ズルいやり方だったと思う。
だけどーー……
"俺、ズルいかもしれない。
だけどーー……"
"ゆずれないものだって、ある。"
「それでも、悠太くんが向けてくれる気持ちに、嬉しいと思う自分もいたの。」
「……え?」
「颯真が悠里を選び始めたとき。
居場所のなくなったわたしの隣に、悠太くんが並んでくれた。
笑ってくれた。
優しかったんだよ。
もし悠太くんがいなかったら、わたしどうしていいかきっとわからなくなってた。
……救われてたんだよ。」
「…………………………」
「悠太くんのついた嘘がいいか悪いか。
それを抜きにしてーー
友達を失うかもしれないリスクを抱えても、そこまでしてわたしに向けてくれた気持ちが、嬉しいと思ったわたしもいた。」
「…………明里。」
「だから………
このまま悠太くんに何も言わないわけにもいかない。
わたしは、悠太くんのことどうでもいいなんて思えないんだよ。」
「………そっか。
なんかさ……。」
「ん?」
「まるで……
ーー悠太くんが好きみたいな物言いだね。」