不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
探りを入れるような佐奈の言葉に、
わたしはしばらく黙りこんで。
「…………好きだよ。」
「え?」
「たしかに……好き。」
そう言って、わたしはふふっと笑う。
「あのね佐奈ーー……」
その後に続けたわたしの言葉を聞いて、
佐奈は「……そっか。」と笑った。
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ーーー……
キーンコーンカーンコーン……
放課後を知らせる鐘と、担任の号令。
その後、わたしは誰よりも早く鞄をつかんだ。
「……明里。行くのか?」
颯真が声をかけてくる。
「うん。悠里のお見舞い。」
まぁ実際は、お見舞いではなくて、少し話したいことがあるから……なんだけど。
「……………。
俺もーー」
「ダメ。
体調が悪い女の子の元になんて、男の子連れて行けないよ。」
「…………だよな。」
理由は、それだけじゃないけれど。
少なからず、颯真も悠里が学校を休んでるのは自分のせいでもあると思ってるようで。
実際、本当に体調不良が本当かどうかは、行ってみないとわからない。
颯真はバツが悪そうに頭を掻いた。
「……行ってくる。
じゃぁね!」
「あ……ちょっと待て。」
急いでその場を去ろうとしたわたしの手に、白いビニール袋を握らせる。
中を開くと、小さな一口ゼリーが5つ程。
わたしの学校の売店で売ってるモノ。
「それ、悠里が好きでいつも買って食べてたやつ。
俺の代わりに、差し入れに持ってってやって。」
3つの味が売ってるはずなのに、買ってあるのは2つの味だけ。
きっと、一緒にいた颯真だからこそ、好きな味を選べたんだろう。
「……わかった。」
わたしはビニール袋を握ると、教室を出た。
その視界の片隅でーー
悠太くんの視線は、こっちに向けられていた気がした。