不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
オレンジ味2つと、グレープ味3つ。
悠里は一つ手に取ると、蓋を開けて口に運んだ。
「…………ふふ。
ほんと颯真くんって、ズルいよね。
"普通に"過ごしてほしいって、その約束守ってくれてる。」
悠里の目が少し涙を帯びて、悠里は軽く目を拭った。
「あたしと颯真くんのこと、聞いた?」
「………うん。」
本当は、今日佐奈から詳しく聞いたんだ。
昨日、颯真が佐奈に明かした内容。
ウォータースライダー前で、夏祭りに誘おうとした悠里を、颯真が断ったこと。
そしてーー
颯真がわたしをずっと好きでいてくれて、悠里もそのことに気づいてたこと。
「告白どころか……
夏祭りの約束さえ、させてくれなかったよ」
困ったように笑いながら、2つ目のゼリーに手を伸ばす。
わたしの胸に感じるのは、颯真から気持ちを告げられた後と同じ、モヤモヤ感。
この気持ちの原因は………
悠里が颯真のことを話すことへの嫉妬?
(……ちがう。)
友達である悠里の好きな人の気持ちが、わたしに向いていることへの罪悪感?
(ーー…ちがう。)
だんだんと、わたしのモヤモヤ感の原因が、形を帯びてきて。
その原因は全部ーー
ーー…わたし自身にあったんだ。
「だけど明里は、悠太くんと順調だって言ってたよね?」
「…………え?」
「悠太くんの気持ちに、これからも答えるつもりなんだよね……?」
「………………………」
「颯真くんには、悠太くんと颯真くん、どっちの気持ちも応援するって言った。
……いい子ぶったの。
だけど、あたしはまだ、諦めたくない。
颯真くんの気持ちが、明里に届かない限り。
まだあたし……頑張ったら未来があるかもしれないよね?
これからも相談に乗ってくれるよね……?明里。」
"ねぇ、明里は好きな人とかいないの?"
"……いないよ"
ある放課後、わたしが悠里についた嘘。
"あたしより、明里のほうが颯真くんのこと知ってるでしょ?
また相談乗ってね!"
わたしの言葉を信じた悠里が言った言葉。
そんな悠里が今、赤くなった目を伏せながら、わたしに問う。
わたしが感じてる心のモヤモヤ。
それを解消しないとーー
わたしは前に進めない。
「……………ごめん。悠里。」
「え……?」
「わたし……
もう相談に乗れない。
応援も、できない。」
ーーもう、嘘はついちゃいけないんだ。