不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「おう。
って言っても、登り始めたときに偶然近くにいたから、自然と一緒に行く話になっただけだけどな。」
「ふーん……」
そう相づちを打って、佐奈はちらっとわたしを見る。
「なによ…その目。」
「べっつにー?」
"偶然"だなんて思ってるのは、きっと颯真だけ。
あの女の子達はきっと計画的。
それを分かってる佐奈は、わたしに"いいの?"っていう意味を込めた視線をわたしに向けた。
そんな視線向けられたって、わたしはなにも動けないのに。
「ぶっ倒れるなよ明里ー」
「なっ……
わたし、体力だけはあるし!!」
いつもの憎まれ口をたたきながら、颯真は上がっていく。
子どもの頃は、わたしが颯真の心配をしてたのに。
あの頃とはもう違うんだって改めて感じさせる。
「……明里!!」
「へ?」
思わず顔を上げると、こっちに飛んでくる小さな塊。
それを必死にキャッチした手のひらから出てきたのは、小包の小さな飴。
「塩飴!
お前、汗かいても水分とらねぇやつだからなー。
水分と、塩分しっかりとっとけよー。」