不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「痛い痛い!ほんと手加減ないんだから!!」
「消毒スプレーかけるのに手加減もなにもないだろ。」
消毒スプレーを机に置き、手際よく包帯をくるくるとわたしの人差し指に巻いていく。
「颯真ってさ……」
「ん?」
「……優しいよね。」
いつか佐奈が言っていた。
"颯真くんは明里に優しい"って。
べつに、わたしにだけ優しいわけじゃない。
この手当てだって、悠里にしたものと同じでしょ?
「……なんだよ。急に。
調子狂う。」
「…………。
ねぇ、あの頃とわたし達、なにか変わったかな。」
これからも、わたしと颯真の関係は、幼馴染みのまま?
なにか少しでも、颯真にとってのわたしの存在が変わっていれば。
それだけでーー
わたしきっと嬉しくなる。
きっとどこかで……
わたしは幼馴染み以上の関係になれる可能性を、捨てきれないんだ。
「…………」
颯真は包帯を最後にテープで止めると、両手に包帯とスプレーを抱えて立ち上がった。
「なんで?俺、お前に変に思われることした?」
「い…や。そうじゃないけどーー」
「……べつにーー」
颯真は、ふっとわたしから目をそらす。
表情が見えなくなって、後ろ姿をわたしに向けたまま、言った。
「べつになんでもない。
あの頃と……俺らは変わっちゃいねーよ。」