不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「ーー…悠太くん。」
放課後、誰よりも先に悠太くんの元へ急ぐ。
今日話をつけておかないと、落ちつかないんだ。
「ん?」
「この後、暇?
ちょっと…話があるんだけど。」
席が悠太くんの近くの颯真は、わたし達のほうへ不思議そうに視線を向けた。
当たり前だと思う。わたしがこんな誘いをするのは、初めてだと思うから。
「明里、悠太くんとどこか行くの?」
偶然、悠太くんの隣の席だった悠里が、鞄の中に教科書をつめながら聞いてくる。
…しまった。
もう少しこっそり言うべきだったかも。
本人がいるこんなところで、「颯真のことで話がある」なんて、言えないし。
「えっと……」
返答に困っていると、悠太くんが「あっ!!」と声を上げた。
ぱっと視線を移すと、彼はもう鞄を肩にかけている。
「この前言ってた、オススメの参考書の話?
今日一緒に本屋行ってくれるんだったっけ。」
もちろん、そんな話はしてないんだけど。
話を合わせろって、悠太くんの目が言ってる気がして。
上手く悠太くんが勘づいてフォローしてくれたのか。
「そ、そう!」
「なに。お前ら、学校の後まで勉強の話すんの?
マジメだなー。
まだ高2だぜ?」
「俺は颯真みたいに努力しなくても点数取れる奴じゃねぇんだよ。
ほっとけ。」
行こう。と、悠太くんがわたしの制服の袖を引っ張る。
颯真のそばを横切って、教室のドアに手をかけたときだった。
「ーー明里。」