不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
「こ、これくらい平気だし…!」
「お前ん家まで20分はかかるだろ。
さすがにびしょ濡れになんぞ。」
握られている腕が、すごく熱く感じて。
ドキドキして、そわそわして。
「だ、だって…!
傘持ってないんだもん…!!」
そう言い返しながら、わたしは颯真の手から離れた。
わたしの心臓は、いとも簡単にわたしの気持ちを表してくる。
"がんばるの?諦めるの?"
放課後になった今でもーー
まだわたしには、答えが出せないまま。
「天気予報見てねぇの?
あぁ。寝坊したか。」
「違う!そんなわたしねぼすけじゃない!」
「ハイハイ。」
は、腹立つ…!!
にやっと意地悪い笑顔を浮かべながらーー
颯真は下駄箱から靴を取り出した。
「や、こいつの憎まれ口はともかく、この中で濡れて帰るのは本当に無理があるよ明里。」
そう言ってくれたのは悠太くん。
すると、颯真はわたしの真ん前に立つと、手に持った傘をわたしに向かって差し出した。