不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
悠太くんが傘を開き、わたしのそでをひっぱって傘の中に入れようとするからーー
「あ、ありがとう……」
わたしはお礼の言葉を口にして、悠太くんの隣を歩いた。
後ろを振り向くと、颯真は傘を開いたまま立ち止まり、スマホをいじっていて。
「そ。颯真…!!」
豪雨のせいで、わたしの声は届かないかと思ったけど。
わたしが呼ぶと、颯真はスマホから目を離し、わたしに視線を移して。
「傘っ…、貸してくれようとしてくれてありがとう!」
わたしと颯真の距離。約5メートル。
この距離があるからか、わたしは珍しく、素直なお礼の気持ちを口にした。
ーーだけど。
「明里からお礼…!?
明日は雪だな!!」
な、なにおう……!?
わざとらしく、凍えた身ぶりをする颯真。
だけどその後、ははっと無邪気に笑ってーー。
わたしはやっぱりその笑顔が好きだと思った。