不器用恋愛~好きな人は幼なじみ~
悠太くんははわたしに叩かれた脇腹をさすりながら軽く笑うと……
すぐに笑いを押さえて言葉を続けた。
「明里はさ……夏祭り、颯真と行くのか?」
「え?夏祭り?」
急な話題の転換だったけど。
わたしの心臓はどくんと脈打つ。
"夏祭り"
わたしと颯真の間では、少し特別な行事だった。
子どもの頃、大人になっても、夏祭りだけは一緒に行こう!と、小さな口約束を交わして。
それ以来、どんなに仲のいい友達に誘われても。
クラス会として夏祭りが選ばれても。
颯真とケンカをしていても…
夏祭りの日には必ず颯真と行って。
それがきっかけで仲直りできたこともある。
それぐらい、なにがあっても、夏祭りは毎年颯真と過ごした。
それが楽しくてーー
すごくわたしにとって幸せな時間だった。
でも今年はーー…
「どうかな……。
わたし…は、行きたいよ。」
「…………」
「……行きたいよ。」
"行く"ではなく、"行きたい"
決定事項ではなくーー
ただの願望の形。
「でもさ……明里。」
「……ん?」
急に悠太くんは歩いていたスピードを緩め、立ち止まる。
今まで以上に真剣な表情に、わたしは少し戸惑ってしまうほど。
「なに?どうしーー」
「俺、聞いたんだよ。颯真に。」
「…………」
嫌な予感はしてたんだ。