櫻いいよさんのレビュー一覧
お弁当屋さんで働く真白。 そこにほぼ毎日やってくる、赤いツナギの男性。 それだけの関係が、彼をきっかけに普通二輪免許を取りに行くことになって、ちょっとずつ関係性が増えていく。 嬉しい、楽しい、ドキドキする。 悲しい、切ない、でもやっぱり好き。 もうやだかっこいいかわいい! ちょっとページを捲ったら、すぐに引き込まれて、一気読み。 主人公は相変わらず真っ直ぐで不器用で、とても私の好み。 男性はもう今までにないほどかっこいい。かっこよくて優しい。 読んでいると私も普通二輪が取りたくなってくる。 この年でも新しいことにチャレンジしたら、新しいなにかに出会えるかもしれない。少なくとも、ワクワクは手に入るだろう。 必死に、まっすぐに恋をする、教習所に頑張って通う、そんな女の子。 いいなあ素敵だなあ。 読後に思わず頬が緩んでしまうお話でした。
求めるものが有り、それが与えられたからといって好きになるわけでもない。 そしてすきだからこそ、自分をよく見せてしまったり、カッコつけてみたり。気を使ったり使われたり。それにちょっと疲れてしまったり。 そんなときの息抜きや弱音を吐き出す相手。 どう思われたっていいやと、好きなように振る舞える、楽な相手。 それが、好きに変化したりもする。 ムカつくところもあるけれど。やっぱり楽。なんでも知ってる、知られている。 お互い同じ気持なのもわかってる。だからこそ。 複雑かつ簡単なリアルな恋愛、の、入り口。 読後、自分の周りを改めて見てみれば、なにかが見つかるかもしれない。 そして!タイトルがとても素敵! 読後なるほど!とにんまりしてしまいました。
とにかくかわいい。 この一言に尽きる。 方言で言い合う二人がとてもかわいくてたまらない。もっともっと、もページをめくってしまう。 素直すぎる彼女は、先輩の言葉を素直に受け止めて努力した。 素直じゃない彼はただそばで不機嫌ながらも居続けた。 ほんとはね、と。 彼女にこっそり不機嫌な理由を教えてあげたくなりました。 田舎から出てきた二人が、この先都会に揉まれてあかぬてても、今と変わらぬ雰囲気を持ち続けてくれたらいいなと思います。
そろそろ結婚を考える年齢。けれど付き合って10年になる彼氏は自由奔放に過ごしている。 好きだけでこれ以上歳を重ね続けることができるほど強くはない。すきだからこそ、それだけじゃダメだと思い知らされる。 いつまでこのままなのか。いつまでこうして続けるつもりなのか。 そんな不安に追い打ちをかけるような事件。 逃げ出して、振り切って、現実に目を向ける。だけど、そんなことが簡単にできるならば10年も付き合っていない。10年という時間と愛情はそう簡単に忘れられない。 私も10年付き合い結婚したので、当時の自分を思い出しました。 何も変わってないかもしれない。何も変わらないかもしれない。 だけど、前よりも少し明るくなったであろう彼女の笑顔が目に浮かぶようでした。 恋に悩む、結婚に不安を抱く、もしくは当時の気持ちを思い出したい方々に、ぜひ。
生まれてからこの歳になるまで、私は何度のクリスマスを過ごしてきただろう。 ふと、そんなことを考えさせてくれる。 初めての彼氏と、大学生の時の人と、社会人になってから。 それまでに、何度、約束を交わしてきただろう。 主人公のように、ふと思い出した時、それらは全部ウソだったのだと思ってしまう。 だとしたら、今交わす約束は、いつまでのものなのだろうかと、そんな面倒な思考にぐるぐる頭を占領されてしまう。 でも、これだけは言える。 私の覗いた主人公のこれまでのクリスマス、これまでの彼女は、本当に、幸せそうだった。 キラキラした日を過ごしていた。 そして、今も。 自分の忘れていたキラキラ輝く思い出を、ふと、蘇らせてくれる。そしてちょっぴりの切なさと、今の幸せを思い出させてくれる、素敵な作品でした。
なんて美しく、繊細な物語だろう。 読み終わったあと、その世界にしばらく浸っていたいと思う作品でした。(そして実際浸りました) クリスマスと言えば、恋人同士がどうしても頭をよぎる。 けれど、このふたりはそんな言葉では言い表せない、だけど微かに、確実に、つながる関係なのかもしれない。 優しさと愛しさがたくさん込められている。 恋にときめくような、例えばイルミネーションのような、そんなキラキラしたものではなかったけれど、雪の結晶が月の光に反射して、輝いて見える、そんな儚い眩しさを感じます。 彼の振り絞った勇気と、彼の純粋な想い。 そしてそれを受け止めた彼女の強さと優しさ。 とりあえず読んでいただきたい、そんな作品です。
人に言えない関係を続ける主人公。 割り切っていたはずだった。覚悟もしていたはずだった。 それでもいいくらい、好きだった。 幸せなクリスマス。クリスマスと言えば、そんなキラキラしたイメージがパッと浮かんでくるけれど、その分寂しさは増すのだろう。 それも覚悟の上だった、とはいえ、寂しさがなくなるわけではない。寒さが和らぐわけでもない。だから、ぬくもりを欲してしまう。 マフラーと、クリスマスと、雪だるま みっつのアイテムがどれも切なく心に残りました。 彼女の一歩が、どこかで、暖かなマフラーに、それを手にする人に、続いていることを願います。 寒く切ないけれど、とても愛おしいクリスマス短編をありがとうございました。
とある紅茶専門店で働く彼。 そしてその店の胡桃さん。 クリスマスイブには色んな人がいる。 幸せに酔いしれる人も。友達と楽しむ人も。そして、不安でいっぱいの人も。 暖かい店でそっと差し出されるのは、ミルクたっぷりの特別メニュー。 体も心も暖かくしてくれて、そして……。 幸せをくばる素敵なトナカイのような胡桃さんに、読んでいて私も幸せにしてもらいました。 ほのぼのとして、心の暖かくなるクリスマスイブに浸らせてもらいました。 こんなクリスマスも、素敵だなぁ。 もっとふたりと、そしてお客さんたちを覗いて見たくなりました。
秋の情景から始まる作品。 あまりにもキレイな描写に引き込まれました。 正直状況は違うものの、私も「私から言ってやるもんか!」と今、まさに思っていることがあり、親友の言葉に耳を塞ぎたい気分になりました……。 ワガママと、素直に言葉に出すこと。 似ているようで実は全く別物。 意地もあるけれどそれだけじゃないからこそ、なかなか簡単に口に出来なかったりする。 顔が見えないのなら、ふれ合えないのならなおさら。 だけど、「言わないこと」で相手にも自分と同じような不安を与えていることもあるのかもしれない、と思わせて貰いました。 たまには素直に。 思いをそのまま言葉にして、風のように相手に伝えることができれば。 金木犀の香る、少しもの悲しくなってしまいそうな秋も、心地よく穏やかに香りを楽しめるのかもしれない。 秋にピッタリの作品、是非、この時期にご一読を。
七つ年上のうのちゃん、お姉ちゃんが、離婚した。 十六歳の主人公は、始めて彼氏が出来て、始めて家に行って、始めて、キスをした。 ゆったりと過ごす時間。 お姉ちゃんとの会話、学校と、友達。そして、彼氏。 なんでもない会話や不安や不満が、少しずつつながっていく。 あぁ、こんな風に、わたしも、みんなも、考えてきたから、今があるんだ、と。 家族との関係。 他人との関係。 あげるもの、もらうもの、欲しいもの、あげたいもの。 それらがいつか、すべて、一本の線でつながる、そんな日が、そんな人が。 それが、お互いであれば、いいね。素敵だね。 きっと、誰もがどこかに抱く気持ちが詰まった、温かく、ちょっと切なくて、だけど幸せな作品でした。 是非、ご一読を。
付き合う前に、必ずとあることを確認する彼女。 だけど心のどこかで諦めていたのだろう。傷が深くなる前に、それならいっそ、と始めから線を引いていたのだろう。 だけど、彼は乗り越えてきた。 乗り越えて、抱きしめてくれた。 普通に、誰もが恋人にするように。 街中に溢れる恋人同士のように。 彼女と彼の、日々。 それは特別なようであり、何の変哲もない幸せな日々。 だけどその日々を過ごしているということが、この物語において何よりも大事なのだと思いました。 優しくて、とびっきりかわいい年下の彼。 そんな彼に心が溶かされていく主人公がとてもかわいらしかったです。 読後、あたたかく、そして病気のことや人と人の関係、そして自分の毎日、いろんな事を感じる事のできる作品でした。
高校生の晃と冬海。 ひとつ年下の彼の魅力に気がつけば目が離せなくなり、気がつけば、恋をしていた。 高校生の恋愛、とカンタンに言葉に出来ないストーリーに、気がつけばどっぷりとはまり込んで夢中で頁を捲りました。 不器用で不安定な思春期に、少し大きすぎる問題。だけどそれを“思春期”の彼らは真っ向に受け止め悩み、そして突き進む。 その中にあるたったひとつの、だけど恋をする上で、人と関わりを持つ上で一番大事なことがぶれない二人に、ただただ心から、幸せになって欲しいと願いました。 オトナになるとこんな風に受け止めるのは難しい。 私は彼女と彼を、羨ましいとすら思います。 不完全は、これから完全にすることが出来るかもしれない。 「私で消せばいい」 このセリフは、忘れられないと思います。 是非、ご一読を。
とあることから、とある男性の秘密の行為を見てしまった主人公。 そこから、キスされて……仕返しして……そして何故か、“取りあえず付き合う”事になってしまった二人。 明るく、楽しいオフィスラブでした。 大きな山や崖があるわけじゃない。だけど、最後まで楽しませてくれる作品。 終始幸せで微笑ましくて、あたたかい、この二人をもっともっと見て見たいと思いながら頁を捲っていました。 正面から向き合う主人公と彼はとても魅力的でした。ちゃんと話をして、誤解を解いていく、悩みを解決する。そんな風に人と付き合っていくことは、何よりも大事だよね、やっぱり、と思います。 そのくせなかなか素直にはなれない主人公もかわいくて、二人を見守る友人のような気持ちでした。 きっと幸せになって、ちょっぴり羨ましくなるラブストーリー。 是非、ご一読を。
同居人が姿を消した。 そんな同居人宛の手紙を見てしまったことが、彼にとっての始まりだった。 そして同居人を尋ねてきた彼の妹であり、手紙の差出人である女の子との出会いが。 ゆっくりと進む話は、とても穏やかで、だけどどこか不安定でぎこちない。だからこそ、気になってそわそわして、頁を捲ってしまう。 独特の雰囲気を感じる作品でした。 だけど私はそれがすごく好きです。 頁数は少なくない。けれど、気がつけば最後の頁に辿り着いていた。彼と彼女と同じように作品を読んでいる間何かを探し彷徨って、そして、ふたりの辿り着いた場所に私もつれて行ってもらえたようです。 この作品を、書籍として手元に置いておきたいと、何で今ネットで読んでいるのだろうかと悔しく思う程でした。 多くの人に見つけてもらいたい作品でした。
たまたまほかの男とよった勢いでキスをした。 それを彼氏に見つかって、ただひたすら謝った。 “なにに?”“どうして?” 自分の気持ちも、人の気持ちも、わからない大学生の主人公。 彼女の口から語られる、過去。 家族との関係に、初めての恋。 そして、今。これから。 表紙に惹かれ頁をめくり始め、読み進めるうちにどうなるのだろうかと気になって一気に読んでしまいました。 さめた主人公の、少し遅い青春。そして、成長と、終わらない青春。 うまく言葉にできない。 だけどとても引き込まれました。 寂しくもあり、切なくもあり、未来への希望が残される輝くほどすてきなラスト。 ああ、こんな結末もいいなと、私までもが彼女の二十年後を楽しみに思いました。 (ベビーブルーの部分の表現、大好きです) この作品を読めてよかったと思います。 ありがとうございました。
とあるカップルの、とある一日。 結婚式当日 年下で、可愛くて、真っ直ぐで、子供なカズミと、しっかりもので、真面目なおなつ。 二人の記念日は思い通りにはいかなかった。想像していた結婚式とは違っていた。大変だし忙しいし、おまけに新郎は……。 素敵な言葉が散りばめられているわけじゃない。 どっちかといえばとても普通で、ちょっと特殊で、珍しくてかっこ悪いところだってある。だけど二人らしい。 おなつの思いがダイレクトに伝わって来て、後半は心を揺さぶられて、胸が苦しくて苦しくて仕方なかったです。 幸せなのに切ない。 だから、これからの日々を大切に出来るのかもしれない。 この二人が、このままのままで年を重ねていってくれますように。 おめでとうございました。 そして 素敵な一日を覗かせていただきありがとうございました。