櫻いいよさんのレビュー一覧
いにより、父と兄を亡くし敗れた国の王女として、愛する人がいたにも関わらず、敵国に嫁ぐことになった主人公。 そんな彼女を静かに愛し、体を張って守る騎士。 惹かれ合いながら、それを分かっていながら、そばにいるのに触れる事さえ出来ず、互いを守るために互いを犠牲にする。 そんな二人の仲に感づきながらも、敵国で彼女を優しく支え守ろううとする婚約者。 そして物語りの要とも言える一角獣。 長年に渡る戦いに、決着を付けるため、何も知らなかった姫が王女となり、一刻を背負うその姿はとても痛々しく、そして勇敢で美しかったです。 登場人物全てが愛おしく、戦いに冒険、そして恋愛。 全てが気になり、この世界に入り込みました。 読み応えがあるのに、飽きることなく、一気に読めるラブファンタジー。 是非、ご一読を。
昔、大好きだった彼がいた。 大好き、という思いはその思いの深さ故に、不安になり、不満になり、必死になり。 そして、壊れた。 その時の過ちを数年経った今でも心に抱く主人公。 そんなときに出会ったのは……かつて大好きだった彼氏。 セックスフレンドから、いつか、本当の彼女に。 昔と同じ過ちは起こさない。 いつか……。 そんな思いを必死にかくして愛する人の都合のいい女を演じる彼女は、とても危うく見えました。 彼女の思いは確かに一方的すぎる。 だけど、彼女を否定することが出来ない。 ここまで自分を狂わせるほど好きになる事が出来る彼女は、どこか羨ましいとさえ感じました。 彼女に、そして……最後の彼に、いつか……そう願います。 是非ご一読を。
彼女に惹かれたのは、傷があったからなのかも知れない。 いや、傷そのものに惹かれたのかも知れない。 傷跡が二人を出会わせて 傷跡が二人をより深めた 彼は傷跡に嫉妬するのか。 それとも傷跡をより好むのか。 右と左、彼女はどちらを愛するのだろう。 短い作品ながら、読後悶々とその後の二人を想像してしまいました。 狂気じみた愛は、愛の深さに比例するのかもしれない。いや、比例することがあってもいい。 私は、そう思います。 個人的に最も好きな愛の形でした。 願わくば。 二人がこの先も二人の世界の中で、壊れるまで、愛し合ってくれたらいいなと思います。
一緒に過ごした高校生活。思い出にはいつも彼がいた。 些細な出来事から 季節の行事まで、 思い出にはいつも彼がそばに居て、いつも彼は笑っていた。 いつまでもこうしていたかった。いつまでもただそばに居て笑っていて欲しかった。 だけど、必ず訪れる別れ。別々の道へと進んでいく仲間。 だから、最後に。 一つだけ。 主人公の日々に、彼が常にいたことが、語られる思い出ですごく感じられます。 彼と過ごした学校生活。その全てに彼はいたのに。 だからこそ、胸が苦しいほど痛む卒業の日。 いつもと違う雰囲気に、“別れ”が身近になってしまう切なさ。 自分の学生生活を思いだし、ちょっぴり切なく、だけど懐かしくて嬉しくもなる、そんな作品でした。 是非、ご一読を。
なんて綺麗で、繊細な物語だろう。 読後、いえ読んでいる最中からそんな世界に囚われ、夢中になってページを捲りました。 画家としてひっそりと暮らす松葉杖の老人と、愛猫のびわ。二人の静かな世界に現れたのは、一人の少女。 花が咲き 花が枯れ 花が乱れ 彩られる庭 そして、明かされる思いと絆 繊細で美しい気持ちに、胸が熱くなりました。 劇的な展開のある作品ではありません。 ただ、ひたすら美しく、そして心に残りました。 目に見える世界は、ほら、こんなにも美しい。美しく彩ることができる。 たくさんの人に読んでもらいたいと、心から思います。
好きでもない男に、初めてを捧げた。 なくなった母が、貢いでいた男に。 全てを知るために、ありったけの勇気と覚悟で踏み出した。 真実を知るために好きでもない男と付き合い、そして謎を探っていく。 けれどその先に見えた物は……。 初めは主人公と同じように彼の本性はどうなんだろうと疑っていたのに、読み進めれば進めるほど、主人公と同じように「そんなことしそうにない」としか思えない。 そして余計に謎が気になって、最後まで読まずにはいれなくなりました。 ほんの小さなきっかけが、次のきっかけに繫がっていく。 知らないことは時に罪だけれど、2人は知らなかったから、この結末を迎える事が出来たのだろうと思います。 恋を受け入れていく主人公もとてもかわいらしかったです。 是非ご一読を。
「死にたい」 彼はそういつも口にする。 そんな言葉に、少女はいつも「またか」と思い聞きながす。 徐々にひも解かれる二人の「言葉」の奥の奥。 気持ちの奥底に眠る黒い感情。そして優しい気持ち。 二人は二人でいることで、自分をみて、自分を守ってきたのかもしれない。 ゆったりと心地よく進むにつれて、どんどんと気がつけば彼女たちの想いの中に入り込んでしまうようでした。 二人の関係、会話、その奥に秘められていた、必死な想いはとても痛々しく、だけどとても純粋。 空は毎日誰しもに同じように青空が覆うわけじゃないけれど。 もしかしたらずっとずっと、くすんでいるのかもしれないけれど。 それでも、すてきなのかもしれない。 それもきっと、きれい。 そんな風に思わせてくれます。 ぜひ、ご一読を。
楽しい時間はずーっと、ずーっと続いて欲しい。 きっと誰もが一度は願ったことがある想い。 夜は暗いから明るい方がいい 夜は会えないから昼間がいい 一緒にいると楽しいから、ずっと一緒にいたい ねえ、だけど。 本当に夜がなくなっちゃったら? ずっと一緒にいれるけど、ずっと一緒に遊べるけど。 だけど夜がなかったら? 淋しい時間を過ごしたら、きっと昨日よりも楽しい時間を過ごせる。 可愛くて だけどほろりと涙がこぼれてしまいそうな、そんな愛しいウサギのお話し。 是非、ご一読を。 眠るときに思い出したい絵本でした。
付き合って3年。 29歳の誕生日。 仕事ばかりの彼氏と、二ヶ月ぶりのデート。その日に彼女はとある決心をした。 なのに。 彼の急なドタキャンで大げんか。1人取り残されて、このままでいいのかと、そんな不安を抱いた時。 出会った1人の、おじいさん。 おじいさんの大切な思い出に触れて、自分の気持ちに気付かされる。 優しくて、温かいおじいさんの話は、読んでいてとても憧れました。 彼氏に怒りたくなる気持ちをぐっと堪えながら迎えたラストには、主人公と同じようににやりと笑ってしまいました。 女性って強い。 それって力じゃなくて、もしかしたら、思いとか、素直さとか、勇気とかからきているのかもな、なんて思ったり。 だけど、きっと。 だから、いつか。 約束を——。 女性にこそ、読んで欲しいと思えるとても温かく幸せでかわいい、そんな作品でした。
母を失い、父とふたりで過ごす藍火。 何事もない、平穏な毎日に、突然現れたのはくすんだ空と、4人の男女。 訳が分からないまま見知らぬ土地に連れてこられた彼女。そんな彼女に救いを求める4人。 それぞれの悩み。 それぞれの苦しみ。 それぞれの、思い。 ため込まないで、私がいるから。 1人じゃないから、傍にいるから。 怖がらないで、空はそこにあるから。 4人の思いは悲しいのに、だけどとても美しい。 藍火の真っ直ぐな思いはとてもキレイで、彼女こそが、彼らにとって、一瞬の、だけどとても素敵な日々だったのだろうと。 だからこそ、あの、一瞬が、彼らの希望に繫がったのだろうと。 結末にも心温まり、登場人物みんながとても愛おしく感じました。 頑張らなくていい、ただ少し、踏み込むだけで何かが変わって行くんだろう、そんな勇気をいただきました。 是非、ご一読を。
突然届いた、一通の手紙。メールがあふれるこの時代に、なんで手紙?そして差出人は、自分には縁がないだろうと思っていた、クラスのマドンナ。 二人の関係は、手紙のようにゆっくりと相手に届いて近づいていく。 確実に、まっすぐに、思いを乗せて。 二人は常に前をみてて、常に自分に正直で、読んでいてとても心が洗われるようでした。 終始ゆったりと言葉が紡がれ、劇的な展開なく、だけど確実に進んでいく時間。それが二人らしさを表しているようでした。 繋がることで得る幸せ。 繋がっていく未来。 毎日過ごしていく。毎日たくさんの事を感じながら。形として残るもの、残らないもの。それら全てが二人の宝物。 大切な人に、素直な気持ちで手紙を書いて、自分の気持ちを精一杯伝えたい、そう思える作品でした。 是非、ご一読を。
幼い頃に出会った少年、カイ。不思議な少年だと思いながら、彼の場所を訪れて親しくなった主人公。 『今』と『過去』が交互に描かれていて、謎や不安、恐怖が増長されるようでした。 カイとはなんなのか。 2人の関係はなんだろうか。 そして最後はどうなってしまうんだろうか。 そう想う気持ちで一気に読んでしまいました。 巧妙に張り巡らされたカイの計画に、私自身も捕らわれてしまったような。 何も知らなかったから 2人だけが全てだったから だから、愛されたかった。君にだけは。 カイの、恐ろしいほど純粋で深い愛情。カイという人物を愛しいと思いました。 読み応えのある素敵な作品でした。
家は居心地がわるい。 友達はいるけど、どこか壁を作ってしまう。 そんな毎日の中、誰もいなくなった放課後の校舎に、かすかに響くメロディ。 心地よい音色に惹かれ、音楽室を覗いて出会ったのは、現国の教師。 忘れたい、そう思ってても、人はなかなか忘れられない。 あの時に戻れたらいいのに。 どうしたらいいの。 それは、まるで同じ場所をぐるぐる回っているだけのように思う。けれど、 どうにかしたい、と思っているのは、もう前を見てるから このセリフがすごく心に残りました。 だから、あと一歩、勇気を。 小さくていい、ほんの少しでいい。 そしたらきっと、みんながそれを支えてくれる。それが、おおきな一歩に、つながる。 自分自身で決めて踏み出すこと、そして周りには大切な人がたくさんいることに気づかせてくれました。 ぜひ、ご一読を。
高校留年 そのままひきこもり そのまま、退学。 学校と、家、行き場を失った主人公は、1人のいじめられっ子と出会う。そして、正体不明のジャーナリスト。 2人の出会いが、彼に、一歩進む勇気を与えてくれた。 絡み合う人と人。 その中に見えるのは、欲望だったり、弱さだったり、強さだったり。 人はとても自分勝手で、とても弱く、そして流されてしまうことがある。 不満を他人にぶつけてしまうときがある。 だけど だからこそ、助けたくなる、強くあろうとする。 人はどこかでいつも人と絡み合っている。 「人が大好き」 この台詞がすごく好きです。 どうなるのだろうと続きが気になって一気に読んでしまいました。 そして彼らのこれからを、ひっそりと応援したくなりました。 是非、ご一読ください。
2年付き合ってきた彼氏。 最近確かに「恋人同士」らしいことは減ったけれど、それでも上手くやっていたはずだった。 そう、だった……。 ところが見つけたモノは、浮気の確たる証拠。 もし、大好きで、信用していた彼氏に浮気されたらどうしますか? 許す? 別れる? それとも、下僕にする? もしも大好きな人を裏切ってしまったら? 失った信用はなかなか回復できない。 信じることを怖がってしまうかもしれない。 だけど、その先にある気持ちに、必死になって素直になって、また創り上げることが出来たら良いなと、そう感じた作品でした。 ハラハラしたり、切なくなったり、共感したり。 是非ご一読下さい。
「別れよう」 そう言われるのはいつものことだった。付き合う人はいつも……「私」ではなく「妹」を好きになる。 双子ではないのに見た目がそっくりな姉妹。 似ているのは見かけだけ。性格は全く似ていないのに……。 似ていないからこそ、「妹」なのかもしれない。 だからもう……誰も信じない。いや、信じられない。 そんな主人公の前に現れた1人の少年、そして友達。 誰しもが願うだろうその気持ちが彼女は人一倍強かった。 「私」を見て。 だけど見失うことなく、常に背筋を伸ばして「自分」を保つ彼女はとても美しい。 そしてそんな彼女を真っ直ぐに見つめる彼の姿も。 自分を見つめてくれる人。 自分を見失うことがなければ……そんな貴方を誰かは必ず見てくれる。 「自分」を感じ、そして少し背筋が伸びるような、そんな作品でした。 是非、ご一読を。