櫻いいよさんのレビュー一覧
あの日、僕等は罪を穴に埋めた。 その記憶を、必死に消し去ろうとして日々を過ごしてきた幼なじみの5人。 そしてその「罪」から逃げ出そうとする5人を捕らえるかのように起こる事件。 過ちを犯して、人は悲しいかな「過ち」に気付くことがある。 必死に自分を保つためにそうせざる得なかったとしても、それでもいかなる理由があろうとも罪は罪だ。 目を背け、忘れたりたいと願っても、過去は変わらないなくならない。 逃げ出しても逃げ出してもいつもすぐ傍にあるその過去。 大きな過ちをした主人公。逃げ出して忘れ去ろうしたけれど、徐々に向き合う姿には決して人のせいにしない思いがあり、常に自分を責める彼にとても胸が苦しくなりました。 とても身勝手でとても我が儘でとても攻撃的で、だけどとても繊細で、弱く優しく、徐々に逃げず罪に向き合う彼を 私はとても愛おしく思います。
優等生で、学級委員の主人公。 好きな人が居るのに告白できないし、心の中では不満ばかりなのにいい子なフリをしてしまうし、 可愛いわけじゃないしスタイルだってイマイチだし。 そんな億劫な毎日を過ごしている中、たまたま出会ったのは 人を引きつける程輝かしく笑う、違うクラスの男の子。 高校三年生は、学生と呼べる最後の年。 その先は、今まで以上に無数にある選択肢から一つを選ばなければならない。 恋をして、喜んだり悲しんだりそして不安を抱いたり逃げたくなったり。 その一番奥深くにある「原因」は「相手」ではなく「自分」なのかもしれない。 意地っ張りで弱虫な主人公。だけど真面目で、しっかりと自分の足で過去を受け止めて未来に進み出す姿はとても素敵でした。 キラキラと輝く高校生時代の恋愛と成長を、是非ご一読ください。
第一印象はそんなによくはなかった。 モヤシみたい、だなんて恋なんかには繫がりそうにない思いを抱いたはずなのに。 なのに気がつけば気になっていたのは君で。 気がついたら君の事ばかり考えていて。 気がついたら涙が溢れるほど、好きでした。 中学生の思い出。 中学時代から紡がれる、大切な想い。 幼くて逃げてしまうことばかりだったけれど、それだけ好きだった。 好きだから傷付くことが怖くて怖くて仕方なかった。 好きだから些細なことだけで幸せだった。 逃げないで向き合ってと想いながらも「なんで出来ないの?」なんて思えないのは、それだけ「好き」の気持ちを感じるから。 好きな気持ち。 幼くて上手に出来無くったって、そこにある気持ちはたった一つ偽りのない想い。 いつか、まっすぐに届けることが出来ますように。 そう願います。 是非ご一読を。
春夏秋冬 その季節はいつどれだけの期間、そしてどのタイミングで訪れるか分からない。 昨日真夏だと思ったら 今日は真冬になった。 そんな場所で暮らす男の子と女の子。 いつも一緒にいたから、好きな気持ちに気付けなくて、気付いたって踏み出せなくて、 数ヶ月間訪れない「春」に願いを託す。 登場人物の気持ちにリンクするように変わって行く季節。 怖くて踏み出せなくて逃げ出して迷って避けて。 そうするほうが傷付かないから。そうすることが傷つけることもあるのに。 大事すぎて手放してしまった気持ち。だけど手放して手元に残った彼女のささやかな願いがとても純粋でまっすぐでした。 季節って四季って素敵だなと改めて感じました。 是非、ご一読を。
付き合って二年ほどになる樹と美里。 ところが、突然美里の様子が変わってきた。 長い髪をばっさりと切り落としたり、好みの花が変わったり、コーヒーよりも紅茶を望むようになったり……。 何があったのか どうしてこんなことを? そして明かされるのは、樹の過去の傷と罪、そして美里の傷と罪。 優しいリズムで進む物語りに一気に完読してしまいました。 愛とは何なのか。 2人の出した答え、そこに辿り着くまでの葛藤や悩みや後悔。 愛があるからこそ勇気が出せたんじゃないかなと感じました。 傷と罪が共鳴して出会ったのかもしれない。けれど育んできた時間は運命ではなく、作り出した物。 是非一度ご一読ください。
凪、祠稀、彗、有須 四人は何かに導かれるように一つの部屋に集い、そして共に日々を過ごし始めた。 前半で彗と有須の秘密が暴かれ、そしてこちらの後編では祠稀と凪の頑なに閉じてきたはずの秘密が晒される。 自分を守るために。 誰かを守るために。 憎み恨み隠し、たった一人で耐えて戦って。 強くあろうとした。弱さを知っているからこそ。 それが間違いだとか正しいとか、そんなことはきっと誰にも言えない。 たくさん泣いて傷ついて苦しくて負けてしまいそうになっても、時間という名の道が誰の背中にもきっと、あるんだと。 未来は幸せに溢れてる、なんて言えないけど過去はきっといつか笑って話せるかもしれない。 そこには必ず、人がいるから。 繊細で綺麗な文章に、必死に過ごす四人の姿に引き込まれました。 心に残る作品、ありがとうございました。
いつも仕事のお昼休みに同僚と足を運ぶ喫茶店。 行きつけのお店で、話しかけてくれるバイトの女の子。 そして新しく入った女の子。 恋をする気持ちは一つなのに、だけどそこから何かに発展するには一つの想いだけではうまくいかない。 好きだから傍にいたいのに、好きだから離れた方がいいとも思う。 好きだけど好きになってもらえないとか。 好きだけどそれは隠して秘めていたり。 この作品に出てくる登場人物は臆病だ。 とても臆病で、弱虫で、そして不器用。 だけど同じくらい真っ直ぐで、優しい。 一生懸命、「いつか」の日の為に今を過ごす彼らに、とても勇気づけられました。 一言一句に込められた想いと、思い出の詰まったキレイで丁寧な文章がとても素敵でした。 このラブレターを是非、多くの方に受け取って欲しいと思います。
自分の罪に懺悔を繰り返しながら、そんな自分につぶされないように毎日を過ごす「しぃ」 自分の居場所を求めるようにさまよう「渉」 何もわからないまま、幼いながらに自分を責めながらその場にあろうとする二人は出会った。 何度涙を流したかわからないほどに悲しくて 何度も悔しい思いをして、何度も惨めな思いをして、必死に正しい道を探して。 何度も間違って 何度も人を傷つけて 何度も裏切られて それでもやめられないたった一つの気持ち。 その気持ちはまるで 雨上がりの虹のように感じました。 「何もできない子供」の時期を、「何かできる事があるはずだ」と必死で強く生きようとする、そんな二人をぜひ、読んで応援してみてください。
言っちゃ悪いけど、ランク外…そう思っていた中山君 そんな彼から急に告白されて…流れで付き合うことになってしまったサチ。 全然知らなかった。 知ろうともしなかった。 恋人同士らしい会話もないし、気のきいたことも言わないどころか、変に素直でちょっと引っかかることばかりの中山君。 そんな彼にイライラ振り回されながらも次第に惹かれては行くけれど… ありのままの自分 見栄っ張りな自分 我慢する自分 合わせてしまう自分 等身大の女の子と 等身大の男の子 読んでいて一生懸命で、時に間違って時に失敗して泣いたり足掻いたりする二人に後半は胸が締め付けられました。 二人の会話もとてもかわいらしくて、思わず読みながら笑みがこぼれました。 一生懸命な恋愛。 リアルな二人を、是非読んで、応援してあげて欲しいと思います。
平凡な学生だった汐。 そして出会ったのはビジュアル系ロックバンドの優太。 平凡だった毎日は、優太と出会ったことで一気にめまぐるしく変わって行く。 惹かれ合っていく素直な気持ち。 だけど、だからこそ、その思いのままに進めない。 傷つけるのは辛いから もっと傷つけないために今傷つける。 泣いて傷付いた心を癒してあげたい。なんでもいいから、傍に。 もう傷付きたくない、だから誰かに寄り添って好きなフリ。 人は嘘をつく。 それは自分を守るためか、相手を守るためか。 その嘘は 自分を傷つけてはいないだろうか。 優しい嘘で相手を傷つけ守り、そして自分を誤魔化した。 彼らが最後に選んだ道を是非、見届けてあげてください。
気がついたときには、人形だった。 動くことも話すこともできないけれど、だけど想いだけはそこにあった。 心を持つ人形と。 心を失おうとする人形師。 人形から見た彼と、彼を取り巻くその世界の中で、ただ彼を想いながら彼の幸せを祈りながらそこに有り続けた。 彼の出会った三人の人たち。傷付きたくないから、時に人は自ら自分を傷つけてしまう。 人は変わって行く。 心も体も変わって行く。 誰もそこから逃げ出せない。 哀れで、悲しく、だけど純粋で綺麗な、そんな人形師を 唯ひたすらに、心いっぱいで愛した人形の物語り。 ゆったりと、静かに動くストーリーの中の、激しい想いが心に小さな傷跡をそっと残していくような、だけど心地良い余韻を感じました。 是非ご一読を。
ちょっと悲しいことがあったとき、淋しいとき、好きな人の声が聞きたくなる。 好きな人に会いたくなる。 だけど人は人の気持ちがわからない。自分の気持ちしか分かることはない。 だからたまに、不安になるんだ。 こんなにも会いたくて会えたらよかったのに、ちょっとしたことで喧嘩をしてしまったり。泣いてしまったり。 言葉にして。 君に会いに行く。 テンポ良く進む物語りに、可愛い主人公。 優しくないけど、だけど暖かい彼氏。 きっと二人には降り積もる雪がピンク色にみえたんじゃないのかなと。 寒い時があるから 人は暖かさがより感じるのかも。 喧嘩をするから、仲直りした後はもっとすきになるのかも。
バレンタイン。 悩みに悩んで選んだ言葉はたった四文字だった。 好きだから だけど 苦しいから 選んだ四文字 想いを込めた四文字 人は不安に支配されると、なかなか抜け出せない。悪いことしか想像出来なくて、自ら不安に溺れていく。 逃げたい 投げ出したい やめてしまいたい その奥底にある気持ちに気付くのはむつかしい。だけど気づいたら、きっと答えは簡単で、きっと、自分も笑顔になれる。 四文字にこめたたくさんの思いを感じる作品でした。 是非ご一読を。
成功を夢見て上京したものの、成功とはほど遠い場所に立ち止まったままの主人公。 だけど傍には愛しい人。自分と違って成功した人。 そして差し出された指輪。 今の自分の気持ちが嘘なわけではないのに、差し出された指輪を受け取ることを躊躇う気持ち。 思い出す過去と 思い出す気持ち。 だけど一歩踏み始めたとき、きっと記憶の花は枯れることはないのだろう。 揺れ動く女の子に、ゆったりと進む物語。 ふわりと花の香りが漂うような短編でした。 素敵な作品、ありがとうございました。 「今、幸せ」 その言葉こそ、幸せだなと感じました。
とある事情で、真昼に外に出ることが出来ない主人公、真陽 いつも見える景色は真っ暗な空。 優しく、だけど弱々しく光る月だけが、真陽の「光」 そんな毎日の中で出会ったのは、暗闇でもキレイに光り輝く髪の毛の男の子。 いつしか彼は真陽の心の光に。 だけどそれすらも… 母の、亡き父の思い。 そして彼の支え 何よりも自分の強さ 失うことのない光を感じました。 優しく暖かい作品。 ありがとうございました。
いじめられないように、上手く付き合ってきたはずなのに、八方美人だ、ということを理由に急に友達から無視されるようになってしまった主人公。 学校も行きたくない。 クラブにも出たくない。 そんな思いで過ごす毎日の中出会った古本屋のおじいさん。そしてクラスですこし浮いている存在の綺麗な女の子。 自分の思う気持ちはなんだろう。 どうしてかなしいのか。どうして苦しいのか。 言葉にするには感情はとても複雑で、わからないから時に行動をまちがえてしまったり。 落ち着いて、ゆっくりでいいから。 言葉にしてまず、自分のことを自分で一番にわかってあげて、そしたらきっと、思いのままに行動できる。 そしたらきっと、相手の気持ちもわかるはず。 不器用で、だけど優しい女の子の勇気の作品。 是非ご一読を。
とあることをきっかけに、声を捧げた女の子、美音。 そして脚のケガで走ることを奪われた少年、祐樹。 広い広い空の下。 出会った意味はきっと 互いにとってなによりも辛い試練と、 そしてかけがえのない思いを得るため… 言葉に出来ないことは辛くて、思いを伝えられないのは苦しくて、分かってもらえないのは不安。 閉じ込めてしまえばいいのかもしれない。 そばにいれば何でもできるのだと思っていられれば良かったのかも知れない。 だけどそうじゃないから。 そんなときもあるから だから空に。 広く自由で、無限の空に。 縛り付けるのはきっと自分以外ではあり得ないのかもしれないなと感じました。 幼く、だけど必死に一生懸命に、そして誰よりも純粋な愛がここに。 是非ご一読を。
目立たないように。 それなりに努力をして学校生活を、毎日を過ごす美月。 そんな美月が適当に借りた本から出て来た一枚の楽譜。 楽譜をきっかけに動き始める日常。 音楽の先生に雑用を押しつけられたり、クラスで人気の男の子と話をして、クラスで一人孤立している女の子もからまって… 嘘をつくのは、気持ちを言葉に出来ないから。悲しい気持ちの分だけ重ねる嘘の虚勢。 それを一枚ずつ暴いてくれて、それを一つずつ受け止めてくれた人。 だけどそれも 自分が嘘をついていたからなのかも知れない。 言葉にして、行動を起こして、間違って隠してぶつかって泣いて叫んで。 そうやって人は自分でも気付かない感情を自分の物にしていくのかもしれない。 変わって行く美月の日常と美月の気持ち。 美月の心の変化に、嬉しくて、切なくて。 涙の溢れる作品でした。
野球部のマネージャーの奈々。 口は悪いし、勢いだけだし、気が強いし面倒くさがり。 そんな彼女を、かばってくれたエース。 もしかして? なんで? 気になり始めたらとまらない気持ち。 がさつだけど思いだけは誰にも負けないし、真っ直ぐで決して曲がらない。 自分に正直に。 自分の思うまま。 そんな彼女にきっと元気をもらえる、そんな作品です。 ハイテンションに ノンストップに 突き進む彼女の恋を 是非、ご一読下さい。
霊感が強いのに誰よりも恐がりなユイ。 そんなユイの目の前に突然現れたのは… ユーレイのヒロ どうして自分がこうなってしまったのか、記憶のないヒロはユイと共にいることを決める。 始めは怖がって嫌がっていたユイだけど… 人と人が関わるから人の気持ちはきっと変わって行く。 生まれたり 失われたり 辛いことも悲しいこともあるけれど。 友達、家族、恋人 大事な人は沢山いるから、どのおもいも全部、同じくらい大事にしたい。 変わることは悪い事じゃない。 変われないことが辛いときもある。 時間と共に流れてゆく季節と、そして思いが切なく風に乗って感じる様な作品でした。 是非、ご一読を。