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時の流れを感じさせないような、ふたりの世界。 翔と紗江子の関係は、第三者は踏み込めない、踏み込んではいけないもののように感じます。 心さえなければきっと、性に悩むこともなかったでしょう。けれど男であろうと女であろうと、辛くても傷だらけだとしても、愛しいと想う心がある人間であれたことは幸せなことだと思いたい。 何が正解かなんて決められないからこそ、2人は迷い戸惑いながら今を共に生きるしかないのかもしれません。 例え答えが出ず何も残らないとしても、時間は戻らず明日さえ先読み出来ないのならば。何よりも今を、そばにいたいと思う気持ちを大事にしてほしいなと。長いスパンではなくその一瞬が、終わらないとイコールであればいいな、と。 2人が常に本気であることが短編の時とはまた違った感じで伝わり、また別のタイプですが翔のような人が身近にいて、考えさせられる、余韻のある作品でした。
『俺達だけの秘密だからな』 何があり、どうしてそうなってしまったのか。プロローグの緊迫感が次の頁へと気持ちを急かしました。 あの日、僕等が埋めたのは何だったのだろう。想いか、弱さか、明日か昨日か。 埋めた場所から芽生えたのは何だったのだろう。罪の意識。罰せられる理由。後悔。懺悔。 あの時ああしていたら、こうしていれば。たらればは後から湧いて来るのに、その時に限って気付かない。 人は時にどうしようもなく残酷で醜く、弱い生き物で。けれどそれが悪いのではなく、目を背けたまま弱さを言い訳に逃げることが悪くズルいのだろうと思いました。 逃げるな 逃げるな 受け入れろ NANAさんワールドの中に込められた勇気とは何か、読んだ方の数だけある物語の完結をぜひお確かめください。 絡みつく様な怖さの中に響く言葉があって、涙が滲みました。素敵な作品に感謝を。
何やら奇妙な体質を持つ豊海。かっこいいけれど無頓着な高城。そんな2人が話すところから物語は始まり、すぐのめり込みました。 豊海が面白すぎて全てに爆笑です。このまま笑って終わるのかと思いきや、特異体質なこともあり、いつだって必死な豊海の恋に切なくる場面も。 他の人とは違うということ。それは豊海にとって障害でもありますが見方や捉え方を変えれば最大の魅力でもありました。そして人とは違う目線で豊海を見る高城だからこそ、高城にしか分からない気持ち。こんなに愛してこんなに愛されるなんて、凄いこと。 時には立ち止まり、自分が決めた道を進む勇気。想いを人に伝える勇気。越えられない壁があるなら受け入れて共に生きていく勇気。 笑えて切なくなって、色んな勇気が詰まってると感じた「致死量カカオ」。400文字では言いきれないほど楽しい作品でした。ぜひ初期症状から覗いてみてくださいませ。
いいよサンの別作品に出ていた2人を先に見つけ、何だこの2人面白過ぎる!と本編を読んだのですが、もう最高でした。 負けず嫌いな女の子澄と、鬼畜すぎる男の子新庄。接点なんて無かったけれど、ひょんなことから2人は出逢ってしまいます。 ――だからさ、関わりたくなかったんだ そんな澄の気持ちがすぐに分かりました。新庄の容赦ない鬼畜っぷりに、澄は奥歯を噛んで刃向かいます。 お互い使う言葉はひどいのに、言いたいことを言う2人には気分爽快。言い回しも絶妙で、何度も爆笑してしまいました。 新庄はひどいなんて言葉じゃ足りないのに、次はどうくるんだと、いつの間にか期待してる自分もまた、鬼畜に狂わされたんじゃないかと思います。 ラストは行けー澄ー!と応援しながら、キュンキュンしてました。いいよサンらしさ全開のラブコメ、心の底から楽しかったです。
病院という鳥籠で日々を過ごす少女、美音。 ――神様なんて信じない。この体も、この命もいらない。“約束”さえ、忘れなければいい。 美音は頑なに心を閉じ、最低限の意思表示しかしない。そんなある日、同い年の男の子、祐樹が入院してくる。 祐樹は活発で正直で、美音の心を優しく開いていくさまが伝わります。 2人が導き出した答えはとても純粋で、だけど悲しくて涙が浮かびました。 苦しいしツラいし、諦めて投げ出したくなるけれど。向き合って乗り越えなければ宝物は取り返せない。 相手を想う気持ちがあるからこそ、自分も歯を食い縛って頑張らなければいけない。そんな作者様のメッセージ性が強い物語。 幼いからこそ上手くいかないけど。幼いからこそ未来は希望で溢れてる。 翼を奪われた2人が恋をしながら懸命に生きる姿を、ぜひご一読ください。
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