沖田 円さんのレビュー一覧
学生時代の世界ってとても狭いです。 ぎゅうっと詰め込まれたその場所で一括りにまとめられて、自分と違うものは排除して、でも本当は自分と同じ人なんてどこにもいない。 そんな世界で必死に戦う、小さな戦士たちの秘色色に輝いた青春。 人はとても弱いけど、戦い方はいくらでもある。 それは青春時代だけじゃなくいつまでだって付き纏うもので、だからこそ彼らの小さなクーデターは、負けるなと、わたしの背中を押してくれるようにも思えました。 彼らのどこかに自分がいます。 だからこそこんなにも彼らの言葉が突き刺さる。 大きな叫びが聞こえたならきっと自分の声もどこかに響くはず。 そう思える、彼らの見上げた空と同じに輝いた眩しく素晴らしい作品でした。 年代も性格も関係なく、ぜひ、青春謳歌してみて\(^o^)/
始終この物語を包んでいるのは静かで透明な空気でした。 何気ない青春のワンシーンでありながら、どこか独特の非日常的な雰囲気。 まるで映画を観ているようにありありと、その映像が浮かんできます。 著者様の丁寧で美しい言葉の選び方に、とても心地良く作品の中へ入り込める。 読んでいる最中も読み終わった後も、その爽快で温かな世界に浸ることができました。 作中に登場する小説の言葉と、それに触れて少しずつ変化する主人公の心。そして未来を感じさせる真っ白のページ。 彼女たちの明日がどうあるか、それはわからないですが、きっと彼女たちが見るだろう眩しい景色を、わたしにも見せてもらえたような気がします。
読後感がすごくいいんです。 ふわあって体の中のイヤなものが抜けて、なんだかとても柔らかいもので胸がいっぱいになって、読んでよかったって心から思う。 そんなとっても素敵な読後の余韻を味わえます。 学生時代特有の、些細だけどとても重要な、いろんな悩みとか心の動き。 友達に対する、異性に対する、自分に対するその様々な葛藤があまりにも真っ直ぐ、等身大で描かれているから、どうしようもなく引き込まれるし、どうしようもなく二人のことが好きになる。 タイトルの意味を考えながら丁寧に読んで頂きたいです。 おすすめの一作、ぜひご一読を。
読み終えるのがもったいないくらいでしたが、でも途中でやめることができなくて流れるようにページをめくって行きました。 画家の老人と、老人のたったひとりの家族である猫と、春に突然現れた女性との、巡る季節の中でのお話。 のんびりと過ぎて行く優しい日常の物語かと思っていたのですが、過ぎて行く季節の最後のときに明かされた小さな奇跡に涙が止まりませんでした。 丁寧な言葉で紡がれるひとつひとつの思いと、優しさと、愛情。どれもが綺麗に織り重なって、最後の、本当に最後の瞬間に辿り着いたとき、彼らがきっと感じていただろう幸福を少しだけ分けてもらえた気がしました。 とても素敵なお話。静かな、ひとりだけの場所で、ゆっくりと読んで頂きたいです。
ふつうの人には見えないもの「モノノケ」を見ることができる少女が、友達のモノノケからとある大切な「モノ」を預かったことから始まるお話。 どこか昔懐かしい景色が思い浮かぶ、由香がおばあちゃんと暮らす家と、モノノケたちの住まう森。 そこを舞台に繰り広げられる由香とモノノケたちとの関わりに、笑ったり、時々辛くなったり、とっても優しい気持ちになれたり。彼らを追いかけて、見守って、できるだけ丁寧に読み進めたくなるお話でした。 いろんなモノノケが登場して、それぞれにそれぞれの生き方があって、彼らの思いを想像みるのがとても面白かったです。 そしてもちろん秀と、秀と出会ってからの由香の少しずつ育っていく心にも引き込まれる魅力があり、いつまでも寄り添って見守っていたい気持ちになりました。 少し前のアニメ映画を観ているような、とても心地いい物語でした。ぜひご一読を。
なんでか不思議と挟まっているアレのことを思い出しました。 いつ取ってもらっているのか知らないけれど、わたしが見上げていたアレもいろーんなことを見守っていたのかなあと思いました。 読後はとても心がほっこりしてつい笑顔になってしまうような、素敵で温かなお話です。 でも、その読後感に混ざってどこかふわっと不思議な心地もするのは、すこし ふしぎ、が織り込まれたちょっと楽しい奇跡のおかげなのでしょう。 互いの真っ直ぐな思いは時に真っ直ぐ過ぎて重なるのを忘れて横にずれてしまったりします。 だけどそれはほんのちょっと横から押して直してあげれば大丈夫なだけのずれなのであって、このお話の「横から押してくれたヒト」は、きっとふたりのことをこれからもどこかから見ていてくれたりするのだろうなと思いました。 たいへんオススメで大好きな短編です。ぜひご一読を。
なんで今まで読まずにいたんだろうと悔やみつつ、よくこの数の中からこの作品を見つけたなと自分をめいっぱい褒めました。 淡い青の中に浮かぶファンタジー。 見事な短編が繋がり合い生み出すのは、壮大な夢と幻想と、小さな真実の物語。 ノスタルジックな雰囲気と圧倒的な世界観にあっという間に飲み込まれ、止まることなく先へと読み進めました。 何が起きるんだろうとわくわくするような冒頭の物語。そこから紡がれるいくつかのお話が、繋がり、最後に起こした奇跡が、不思議で切なく、でも温かで心地いい読後感を与えてくれました。 内容を語ると楽しみを奪ってしまいそうなのでそこは触れずにおきます。 ただ皆さんに読んで頂きたいです。本音は、内緒にして自分の中に大切にとどめておきたい気持ちだけれど。 この素敵な作品に出会えたことに心から感謝です。 またひとつ、いつまでも大事にし続ける宝物が増えました。
ここまで同性に愛されるヒロインってなかなかいないと思います。 どこまでもかわいくて、つい背中を押してあげたくなる。 頑張れ真白ー!よく言った真白ー!泣くな真白ー!よかったな真白ー!! おまえ何者だよって自分に突っ込みたくなるくらいのそんな叫びを、何度心の中でしたことか。 何よりも愛らしく、キュートでハッピーで大人なのに純情な、きっと彼女の最後の恋のお話に(そして光太郎さんの「わたしをどうする気!?」ってほどの爽やかなイケメンさに)キュン死にせずにはいられない。 大好きな人に近づくために一生懸命で、一途でひたむきなその姿。 枯れて荒みかけたわたしの心にとんでもねえピンクのほわほわしたもんを取り戻させてくれました。 ハッピーな可愛いラブストーリーをお探しの方、そしてバイク女子の皆さま! ぜひオススメしたい一作でございます。どうぞご一読を!
恥ずかしながらクラシック音楽にはまったく詳しくありません。 だからこそ、この作品の中で幾度となく奏でられたピアノの音を彼らと一緒に聴けなかったこと、それが心底悔しかったです。 でも、それでも胸を張って言いたいのは、その音を奏でて聴いた彼らの見続けた世界は、きっと確かに淀みなく伝わっているっていうこと。 ピアノとバスケ。出会って繋がった先の小さくて大きな奇跡。 歪なようで何よりも純粋だった彼らの愛情に、心揺さぶられずにはいられませんでした。 いろんなものがぐちゃぐちゃと混ざり合って、でも芯は透明で真っ直ぐな心の声。等身大のそれが繊細な言葉で紡がれていて、読んでいる間はわたしもずっとその色と音の中にいました。 17歳という年齢って、とても特別だなあとなんとなく思います。 今彼らと同じ年齢の方はぜひ読んでほしい。そしてもちろんわたしと同じく、元同い年の皆さまも。
かなさんの書かれるお話はいつも、心の中をそのまんま覗いているみたいに、ひとりひとりの思いが丁寧に大切に描かれています。 それがわたしがかなさんの作品を大好きな理由であり、そして今回このお話を読んでより一層ファンになった理由でもあるのです。 金色の髪の不良男子高校生と、おとなしめで優等生な女子高生の恋の話。 決して特別でドラマチックな物語ではなく、ごく普通な男の子と女の子の、等身大で一途で、めいっぱいの優しさに溢れたお話でした。 彼らの心を大事に言葉にして、飾らず真っ直ぐに紡いでいるからこそ、彼らと同じように一喜一憂してドキドキして。 それから何気ないシーン、何気ないセリフにも、思わず涙しそうになったりして。 ぜひ、年齢も性別も関係なく、多くの人に読んで頂きたいです。 とても素敵なお話でした。ありがとうございました。
荒廃した近未来の東京を舞台に、“正義”を見つける物語。 コンパクトな内容ですが、確かな文章力と構成力であっという間に世界に引き込まれ、短編を読んだとは思えない濃い読後感を味わえました。 長編で読んでみたいとも思ったのですが、この量だからこそ本当に大事なものだけがぎゅっと詰め込まれていて、素晴らしい作品になっているのかもしれません。 『いつだって決めるのは自分さ だから ぼくらの正義を探しに行こう』 千景とアキラ。そして荒れ果てた街で今もなお生き抜く人々。 それぞれがそれぞれの正義を持ち、何が正解なのかもはっきりとはわからない。でも自分の中でだけは確かな“正義”を抱えて、正しいことを祈り進んでいけば、もしかしたら何かが変わるかもしれない。 まだ間に合う現代に生きているからこそ突き刺さる言葉の数々がここありました。 多くの人に読んで頂きたい作品です。ぜひご一読を。
陽炎の中の景色のような。 なんだかこことは異なる空気の流れる場所で、紡がれているかに感じるお話。 叙情的に語られる文章に、じわっと沁み込むようにこの世界へ入っていきます。 近代文学の本を読んだときと、同じような気分。どこかノスタルジックで非現実的で、かつとても近くにあるような世界。 儚いなあと思いました。なんとなく、勝手に、彼らの繋がりは長く続くものではないような気がして。 儚いからこそ美しくて、きっと彼らはその美しさを、捨てられないような気がして。 語るにはとても難しい作品です。だからこそぜひ読んで頂きたいです。 短いお話ですが、時間のないときにではなく、ゆっくりと落ち着いた夜に、ぜひ。 あと、わたしは最初は「うつうつ」と読んでいましたが、読み終えた今は「からから」でもいいなあと思っています。
こういうのとてもいいなあ。 かっこいい男の子にきゅんきゅんするのもいいですが、かっこいい男の子に(恐らく)惚れられて困惑しつつ頑張る、そんな女の子のお話もとっても可愛くて好きなのです。 このお話もそんな感じ。 隣の席の小野くん(バスケ部・イケメン・現在ケガ療養中)のお世話係にいつの間にかなっていた町田さんの奮闘記。 とにかくもう小野くんがかわいい。 かっこいいのにかわいい。好き好きビームがこんなにも出ているのになぜ気づかないんだ町田さん!と間に入りたくなるくらい。 初々しいふたりのことを、もっと長く見守っていたくなります。 そりゃもうできれば同じクラスになったあたりのところから。小野くんに命令されるまでもなく町田さんがまっすぐに小野くんの目を見られるようになるあたりまで。 そして、もしもわたしが小野くんの隣の席なら、きっとよろこんでお世話するでしょう。
いろんな愛のお話。 7つ年上のうのちゃんが、リコンして我が家に帰ってきた。 わたしは彼氏とはじめてキスをした。そんな日に。 キレイゴトばかりではどうにも片付かない世の中なので、「あなたがいればそれでいいわ」なんてなかなか思えないし、ちゃんと返ってくるモノが欲しいし、自分のことわかってほしいし、正直イライラもするし。 こまりちゃんの等身大な心模様、それから少しずつ染みるように伝わってくるうのちゃんの思い。 彼女たちと一緒にむぎゅむぎゅと悩みながらページを捲っていった先で、とても優しいものに気づきました。 わたしに姉妹がいないからこそ、うのちゃんとこまりちゃんの関係が心底羨ましかったです。 とても素敵だなあと。でも、似たようなものを自分もちゃんと持っている、と。そんなことを教えてくれる作品。 愛に溢れた素敵な作品。大好きなお話です。 ぜひご一読を。
何よりまっすぐなひとつの愛情でした。 図書館で働く主人公が、とある本の間で偶然見つけた1枚のメモ「ティラミス食べたい」。ほんの少しだけ不思議なその出来事から、小さな奇跡がはじまった。 著者様のお人柄なのでしょうか、とても繊細で優しいのに、なぜだか涙が出そうになる。ぎゅっと苦しいのに心地いいような、言いようのない読後感に包まれました。 「音楽の神様」に愛された少年と、きっと何の変哲もないごく普通の女性。とても細いけれど、宝物のように綺麗で、長い長いその繋がりが、どこまでも続いていくことを祈ります。 聖夜の奇跡ってこういうことをいうのかなと思いました。 時々、でも何度でも読み返したい作品です。 ぜひご一読を。