八谷紬さんのレビュー一覧
誰もが聞いたことがある『オズの魔法使い』 それをベースに繰り広げられるのは、どこか皆儚げな主人公たちの冒険。 ふと気づけば御伽噺の世界の中で。 現実に戻るにはオズに会いに行かねばならない、そしてその道は記憶をなくしたうららにしかわからない―― 不思議な世界で、彼らは彼らの冒険と探求を始める。 時にそれは辛い過去を現実を、時には懐かしさを見せながら、彼らはそれでも進んでゆく。 周りにとけこめないうらら いつもうららの側にいるソラ 冷静沈着なアオ 少し荒っぽいレオ お調子者のリオ それぞれに何かを抱えながら 確かな希望と絆を携え、辿り着いた先には 終始泣いてばかりでした。 でもそれは悲しいからじゃない。 私も夢みる王子に魔法をかけられたひとりです。
美形で何でもこなす生徒会長(有名企業跡取り)vs体力なら負けないラーメン屋の娘 いがみ合い、喧嘩を繰り返すふたり。 だけどそれはいずれ様々な感情を生み出し。 周りを巻き込みつつ、巻き込まれつつ、月日は流れてゆく。 個性豊かで魅力的な仲間に囲まれ、高校生活を過ごし。 それはヒロインの健気さと軽快さで心地よく。 時折くるポイントに笑いながら、あっという間に読み終わりました。 難しいことはなし、とにかく面白い! でもちゃんと過程があって、理由があって、進むにつれて涙が出ます。 学園コメディ(ラブ含む)が好きな方は是非。 私はきっと作者様と世代が一緒です。
退屈な日常 違った煌めく何かが欲しくて 身近なものには目が向かない そこに降り注がれたひとつの星 そして煌めく日常 なのに現実は厳しくて まだまだ先の長い人生を持ちつつ 数多のことを考えなきゃいけないことになる 身に降り懸からなければわからない現実がある テレビやネットの世界でその情報を手に入れ知った気になっている でもよく考えて 自分の大切な人が巻き込まれたら そこまできたら きっと退屈な日常の大切さに気づくはず 様々な想いとメッセージが詰め込まれた物語 ぜひ、10代に読んでもらいたい
人が恋に落ちる瞬間はどんなときだろうか。 吊り橋理論とか、ギャップを見せられたときとか色々あるけれど、案外そんなの関係ないんじゃないかと思う。 明日香は地上にぽつり立つ月に出会う。 その月は、天上の月の如く冷たくて、闇夜に浮かんでいて。 でも明日香という少女のおかげで、天上の月のように暖かく、周りに星を散りばめて。 きっと明日香にとっては闇夜を照らし、道を教えてくれる大切な、彼女だけの地上の月だったのだと思う。 人の過去を知るのは辛い。 過去を受け入れるのはもっと辛い。 だけど明日香は過去を全て含んで今の彼なのだと、受け入れる。 それはきっと彼女が純粋だからとかではなく。 明日香にだけの月で、その月が照らしたのは明日香だったから。 静かに紡がれていく、優しい恋唄。 それはきっと今も、月に捧げられている。
ちょっと鬱積としていた毎日。 ところが気がついたら、やり直したかったあの頃に戻っていたら――? 誰だって後悔はするもの。 いくら「後悔のないように」なんて言われても、これっぽっちもしない、なんて人はきっと稀。 だけどやり直しの機会を与えられたら? 数年後、自分が、周りの人間関係がどうなっているか知ったまま、やり直せるかもしれなくなったら? この答えはきっと難しい。 未来を変えたいと思うか、変えてしまう恐怖に怯え同じ時を進むのか。 主人公はきっと誰もが躓くところで躓いて、でも彼女なりの答えを導き出した。 それは簡単なことではなくて、必死に迷い、考え、泣いて。 その結論が何であれ、彼女が出した最善の答え。 もう大人になってしまった自分へのもどかしさ、15歳の頃の懐かしさ、そして優しさに溢れる物語。 貴方なら、リトライしますか?
明るい光が見れない少女。 そんな彼女が好きな顕微鏡は、一体何を見ていたのだろうか。 顕微鏡・成長・恋愛 このみっつが綺麗に絡まった、素敵なストーリーです。 短いながらも色んなことを教えてくれ、爽やかな印象を与えてくれます。 タイトルが不思議ですが、終盤から徐々に納得。 顕微鏡をストーリーの軸に持ってきたのは上手いと素直に思ったし、その発想に憧れを抱きます。 さりげない優しさと爽やかな風に包まれた作品。 私はこういうの大好きです。
図書館を舞台に日々を漫然と生きる少年が、あるひとりの少女に出会う。 友情深めて、恋して、いっぱい遊んで夢に向かって。 それが「青春」だなんて私は思えない。 勿論それも含むのだけれど、それだけじゃない。 青春は青い春、元は五行思想から春の色が青だから出来た言葉。 それが転じて「青くさい」の意を含み、現在に至る。 だから私の中では「青春=苦い経験」ともなる。 まだまだ青くって、大人になれなくて。 でも様々なことを感じ、吸収してゆく青春。 「春」は新しい命が芽吹くとき。 この主人公は何か新しいものを生まれさせることができただろうか。 タイトルは「終わる日」だけれども、何かが「終われ」ば新たな「始まり」がつきものだと私は考える。 文章も空気も綺麗でいて切なく素敵な物語。
出会いは最悪。 その後も顔を合わせては喧嘩ばかり。 大ッキライ。 大ッキライ。 その繰り返し。 それでも切れない理由は、家がお隣さんだからなのか、他に理由があるのか。 嫌い、口ではそう言う。 本心もそうかもしれないけれど。 でも「嫌いだからこそ」相手のことをよく知っている。 二人の主人公の視点で進む、二人の歴史。 身体は成長してもなかなか大人になれない『甘酸っぱい』物語。 文章もとても読みやすく、悩み続ける二人の姿に共感できます。 でもどちらかというとお母さん気分で見守ってるような… たまには甘さ控えめ、青春度たっぷりな恋愛ものはいかがですか?
最初は何かと思いました。 でも、クリックして進む度、異様な雰囲気にのまれます。 半分も読めばもう後戻りが出来ません。 「ああ、きそう、そろそろきそう」 そんな感覚が一気に押し寄せてきます。 簡単な言葉だけど、もうとにかく「面白い」! 文字通り、目が離せない! 取りこぼさないよう、画面にくぎ付けです。 作者様の作りこみと、アイデアに脱帽します。 細かいことは言えませんが、「一読」ならぬ「一見」する価値ありの作品です。
『胡蝶の夢』をモチーフに、自我を問いかける、澄んだ物語です。 文章については、読みやすく言葉の選択も流れも綺麗です。 ただ綺麗過ぎて若干「毒」がないのが勿体ない、という印象。 内容は物語が変わる後半、ちょっと唐突な印象を受けましたが、記憶に残ります。 出来れば前半でさりげなく匂わせていて欲しかったという思いも(私が読み取れていなかった場合は申し訳ないです) 終りが少し勿体ない気も…これは個人差があると思いますが。 橘が少し淡白なようで、ただそういう風に感じさせたかったのなら成功だと思います。 私が感じたことはレビュータイトルに。 瑞樹という人物からそう思った次第です。 色々厳しく書きましたが、透明度の高い、そして良い意味で冷たさを感じる作品。 個人的に、この手のものは考えさせられて大好きです。
静謐、というと語弊があるかもしれないが、私が抱いた印象のひとつ。 どこか悲しく、狂おしく、静かな世界へと入り込める物語。 内容は、一軒のアンティークショップに置かれているものを買った人々が、運命に翻弄されてゆく、という話。 オカルトファンタジーという言葉がぴったりではないかなぁと個人的には思います。 一話完結なので読みやすく、文章も綺麗にまとまっています。 ただ凄惨なシーンを含むため、苦手な方はいるかな…とも。 お気に入りの1作品です。