蒼山 螢さんのレビュー一覧
ひとつの夏休み、少女と少年。 息を詰めたような夏の暑さ、空気、悩みと、感情がこの短編には詰まっていました。 こんなに色とりどりの世界にいるのに、モノクロなら、と彼女はいいます。 淡々と流れる物語に、少女の孤独と切なさが浮かんでいて、胸が痛くなります。 最後、モノクロのむこうにどんな色が見えただろう。 色水がはじけたみたいなラストに、そう思いました。 著者にしか出せないこの雰囲気がわたしは大好き。 素敵な短編をありがとうございました。
ゆっくりの呼吸と同じ速度で読める。 バスルームで主人公が昔と今とを思っているシーン、なんだかジーンとして涙が出る。 共感だなぁ分かりすぎるほど分かる。 主人公を後ろから抱きしめたくなるけれど、それはきっと少女の自分も重ねてるのかもしれない。 辛い恋をしてきた人、社会で苦労してきた人ほど、塗り込めて固める鎧を作る術が巧いから。 自分を剥がしてありのままにしてくれる人を愛したいと思う作品でした。 作者さまみたいにふんわりとあたたかい作品です。
輝は校内放送で「宣戦布告」を聞いた。 そこから、まわりが、自分が、変わっていく。 青春の破壊と再生。大げさでなく、その言葉が合うと思う。 こういうヒリヒリする青春を書くのがとても上手な作家様だということは分かっているけれど、毎回新鮮で毎回心をつかまれます。 これからどうなるの? どうするの? えっ危ないよ、ちょっとドキドキするよ! 行くの? わっ来た! 読みながらそう反応してしまいます。 自分の心と向き合うのって嫌い。だってこんなに苦しいんだろう。 他人のせいにしていたほうがいい。だってこんなに楽なんだもの。 登場人物みんなそれぞれ心に思いがあって、ラストは胸が熱くなってホゥとため息。 素敵な作品でした。読めてよかった!
つま先で立って求めていた恋は、愛は、どこか窮屈だった。 それを吐露してる相手、彼は、あたしに一番近くて、なんでも知ってて、肉を焼いて煙草吸ってるし……。 「楽な相手」と言われるの、自分はあまり好きじゃありませんでした。 少し気を使って欲しいし、大事にして欲しいし、愛して欲しいし。 でも、その欲しいだらけの欲求は大事にされたことが無いからだと分かって(笑 (気付いただけ良かったのか) 自分がありのままでいられる相手。 素直ですっぴんで、飾らない自分を受け入れてくれる相手が、どれだけ大事なものか。 この短いお話の間に、主人公の気持ちがふっと変わる瞬間、読み手の感じ方も変わる。 微妙で絶妙な書き方、とても好きです。会話と台詞とテンポ。この作者さまにしか書けないと思います。 ほんわりと元気になれる作品です。
かつては自ら光放ち夢を追いかけていたのに、絶望し輝きを失った昴。 自分を隠し、苦しく生きていたけれど、輝く存在を見つけた真夏。 ふたりは出会う。青い空に近い学校の屋上で。 主人公の昴がどこへ向かうのか、ふたりがどうなって行くのか。目が離せず、でも大事に読みたくてページ行ったり来たりして読んでいました。 この作者さまはいつでも、迷うちょっと弱い自分に温かい言葉と気付きをくれる。 まっすぐ、それでいて優しく輝く星のように、私はそう感じます。 この先、また辛かったり落ち込んだり、色々悩むかもしれない。でもそれでも、お互い見失わないで。自分と、きみを。 是非このお話を読んで、あなたにとって輝くなにかに出会えるか、気付けるか、探してみて欲しいと思います。 素敵な作品、ありがとうございました。
嫌いな世界で、生きてる。それでも好きなもの、信じられるものを見つけて、掴める。奇跡ってあると思う。 自分がこの子達と同じ歳の頃、そうだったかもしれない。真っ直ぐで純粋で楽しさ悲しさたくさん持ってて、小さい胸に抱えて。 サヤの亡霊は、全部を空から繋げたんだなあ。そんな風に思いました。 それぞれの視点がとてもしっかり書かれてあって、繋がりが自然。 読んでて、こいつ最低だって思った人物も居たけど、それって綺麗事だけじゃないから。きちんと包まず書いてるからです。 わあ、きゃあ、好き!そういうのだけじゃない感情も引き出される。それって凄いと思います。 美しく流れる、ショパンの調べに乗せて紡がれる、青春。 他の作品も読んでみたいなあ、そういう風に思う作家様です。
おさななじみのセッチとこふじは、お互いが大事なくせして、なんか、素直じゃない。 セッチの、こふじに対する気持ちが切なすぎて、あたしは夕焼けの坂道を駆け下りたい気持ちになりました こふじの、幼なじみという大事な居心地の良い関係を、無くしたくない。セッチを好きだけど、なんかな、そうじゃなくてね、みたいな気持ち。理解できるから夕焼けの坂道を駆け上がりたい気持ちになりました。 そして、頂上で出会った。(あたしの中で) もう、気持ちはカオちん玉木くんと一緒。なんにしてんのーもう、なんなのあんた達! でも「素直なココロと素直なカラダ」。 二人とも持ってる。良かったって、読み終わった時に思いました。 かなさんの安定感は、安心して読める。情景も目に浮かぶし、心情の表し方も絶妙。ティーンが読んでも大人が読んでも、心惹かれるはず。 ぜひ、ご一読を。
その時は精一杯好きだったから。嘘は無かったから。 精一杯が嘘になってしまう時もあって。 でも、その先に真実があったなら。 ひとつに辿り着くまでの道のりだったんだから。 男の人って、こっちが「温かいな」「安心するな」「幸せだな」って 思うことと、同じに思っているのかな。 恋人は、同じに思ってくれているのかな。 わたしも、同じことを思うから、ナナちゃんの気持ちが分かる。 女の子の気持ちの書き出し方がさすがだなと思います。 自分の中の、大事にしておきたい部分に触れられているようで。 シチューの香りが、します。 この幸せを、ぜひ味わってみてください。 2人の「ずっと」が、ずっと続きますように。 (ヒゲがちくちく、っていうの、髭好きとしてはたまらないです。 ちくちくと、幸せ。)
幸せになる色。 胸が温まる色。 ドキドキする色。 そして切ない色。 いくつかの色の蕾が集まって、ストーリーの花束へ。 可愛らしく、でも強く、魅力的な女性陣。 ちょっとだけ「しっかりしなよ!」って 言いたくなるような男性陣。 ああ、みんな幸せになって欲しいと願いながら読み進め、 そして。 ……ネタバレになるから書けない! 太一が花束を買うシーン。とても好きです。 とても温かい文章に惹かれます。 巧みに組まれたピースに思わずハッとします。 素敵なお話、ありがとうございました。
タイトルに惹かれ、読み始めました。 目を閉じると見える、違う世界。 その世界の、恋物語。 ステイルとユン。 女としては過酷な運命をくぐるマイヤ。 読んでいて胸が切なくなりました。 切なくて素敵なラストが待っています。 違う世界の228ページの旅行。 ぜひ、ご一読を。
冒頭から心をがっちりつかまれました。 特に描写がすばらしく、独特というか、なんとも言い表せない空気を纏って 身震いするほど、好きになりました。 それだけじゃない。 レビューには書ききれない、語れない、文字が足りない。 2LDKの部屋に、まるでそこに自分も居て、 空気として存在して、そこで起きている出来事を見ているかのよう。 まさか、と意識が先走る瞬間が、あたしは2度あった。 あの時のざわめきが忘れられない。 仙台の、冬の街を歩く時。 きっとこの物語のシーンを思い出すでしょう。 どこかに居る、彼女のことを思って。
ああ、大人になるって、こういう感じだなぁ…… 淡くて甘酸っぱい思い出、 夏休みの匂いと、制服の匂い。 朝海と星治、宝田。 友情と恋って、どっちも大事だし でも一緒にできない。ならない。 短編でもとても表現力ゆたかで、 読後の余韻も深く、とても好きです。 ベランダの窓のシーンはゾクゾクもの。 かつて高校生だったひとも いま高校生のひとも。 きっと虜になるはず。 素敵な作品です。
この友人がいなければ。 そう思える友人がいるなんて羨ましい。 同性の安心感と、変わらないことへの希望。 「あたし達」が、互いを求めたのは、 想い出なんて言葉じゃ片付けられない。 この気持ちと秘密は「私」に嘘をつかないだろう。 あなたは、ルージュをひかない「私」の唇の 温もりを、知る人。 作者は男性だけど、とても女性らしい心理描写に色気があります。 ぜひ、ご一読を。
年下の男の子を黒猫に例えている主人公。 猫って、気まぐれだし 自分が構って欲しいときにしか来ないし そんで、こいつは黒髪だから黒猫。 年下くんをからかうように駆け引きしながら、 でも自分が恋してしまう。 ずっと見ていた猫の目に 気付いていた、か? 男の表情に変わる時の 色気にドキリとしました。 ぜひ、ご一読を。
心の不調は体に 体の不調は心に 実体験を淡々と綴るだけでなく 気持ちも伝わり胸が痛くなる。 あたしは、大人になるにつれ 自分の体をあまり大事にして こなかったんだなと、 思っている時にこの作品に出逢いました。 なによりも、 「あたしみたいな思いをする子が増えませんように」 そんな切なく優しい心の「菜々子ちゃん」の上に たくさんたくさん幸せが降りますように。 そう祈らずにはいられません。
その後、体調はいかがですか。 命がけでときめいて恋をして中毒症状を起こす豊海ちゃんに、 展開は面白いし笑っちゃうのに 涙が止まらない。 面白いとか言ってごめんなさい。 リバースする豊海ちゃんを抱きしめたい。 不憫でならねぇ。涙がぼろぼろ出てくる。 段々と気持ちが変化する高城くんにニヤニヤする。 あれこれ恋心かしら豊海ちゃんごめん。 「付き合う」という言葉にドキドキギュンギュンしていたあの頃を思い出します。 下校は手を繋いで、あー車危ないよ、こっち側歩け、なんだよ見んなよ恥ずかしいだろ みたいな会話をしたい!と騒いでいたあの頃 今度この話しましょう。 ---- 中毒性はそりゃあ高くて。 読んでる間に呼吸が荒くなってクラクラしちゃう。 笑ってる場合じゃないのに。 でもそれがとても気持ちいい。 最高の作品でした。 味わってみては?