風花 キヨラさんのレビュー一覧
・ 「大丈夫だよ!」 そういって貰いたい時がある。 今立っている場所が不安定で、明日という未来が何だか信じられない。 それは、もしかして「今」なのかもしれない。 この小説は決して甘々なファンタジーではない。 精霊や魔法が飛び交う美しい異世界が舞台でありながら、そこには深い歴史に基づく様々な者達の思惑と葛藤、そして騒乱が渦巻く。 それらは時に目を背けたくなるくらいに壮絶で、足が竦む事さえある。 けれどそれでも私がしっかりと足を前に進めていけたのは、そこに「フェイレイ」という主人公の存在があったからだ。 どこまでも真っ直ぐな心を持つその少年がいる限り、「きっと大丈夫。」そう信じて読み進められた。 だから今、 この小説を傍に置いてみるのも良いではないか。 「フェイ」と一緒なら今の状況を乗り越えて行ける。 確かに、そう信じられるから…。
・ 日本史は得意ではなかった。 でも、赤い鳥居に惹かれたり、神器の眠る海に想いを馳せたり、妖という響にドキッとする自分がいる。 その不思議な感覚は、この小説を読み始めた時から加速度をつけて一気に膨れ上がっていった。 胸の疼きが止まらない。 それは、見えない糸で結ばれた二人の恋のやり取りにドキドキするから・・・だけではない。 もっと深い所で自分の心を揺さぶる何かが、この小説の中には隠されていたからだ。 それは何か? その答えはこの壮大なファンタジーを読み終えた時、あなたの中に潜む遺伝子が、きっと見つけてくれるだろう。 そしてあなたはその偉大さに、温かさに、涙するに違いない。 日本史が得意ではない私が、自信を持って言えること。 『この空想時代絵巻(純和風ファンタジー)は、凄い!!』 ・
・ 美しいお話である。 美しいと言っても、磨き上げられた宝石のような煌びやかな美しさではない。 喩えるなら、月の光に照らされて水底でゆらめく、まだ外気に触れたことのない天然石のような神秘的な美しさである。 月の使いの少年によって語られるその10のお話は、ひとつ読み終わる度に、きっとあなたの胸を切なくさせることだろう。 それが何故なのか・・・。 その答えは、最終話にある。 少女は何故、Fairy Taleが好きなのか。 少年は何故、いつまでも少年のままでいたいのか。 これは、人という生き物に与えられたその性の理由までも考えさせられる。 伝えていくために、繋げていくために・・・。 このお話の中に秘められたもう一つのFairy Taleを、 ぜひ、読み取ってみて欲しい。 ・
・ 人を愛しいと想う気持ち・・・ それは、どこまでが子供で、どこからが大人なのだろう。 教師と生徒。 学校という枠を出れば、一人の男と女のはずなのに、その枠が彼らにモラルという名の足かせを填める。 人を愛しいと想う気持ちに年齢制限など無いはずなのに、彼らは否応なくその枠の中で悩み、苦しみながら、その想いを持ち続けようともがく。 特筆すべきは、随所に散りばめられた関西弁。 飾り気のないその言葉の一つ一つが、揺れる彼らの心を一層健気に、切なく描き出す。 彼らの想いはどこへ向かうのか・・・。 予想外のラスト。 それは、続編への序章なのか、それとも永遠の愛の象徴なのか。 私は、密かに前者であって欲しいと願っているのだが・・・。 ・
・ 動物の話は本当は苦手です。 すぐ傍にいる姿の違う家族に、想いを重ねてしまうから。 自分の中に隠し持ったスイッチが、自分の意思に関係なくONされて、 人目をはばからず号泣してしまう事が分かっているから。 でもこの話を読んだのは、若干18歳の作者の胸いっぱいの想いを、受け止めてみたくなったから・・・。 この主人公マリンの、飼い主を慕う切なる想いを、最後までちゃんと見届けてあげたくなったから・・・。 もちろん、号泣です。 しゃくりあげて泣きました。 でもね、このお話は教えてくれました。 自分のエゴだけで動物を見てはいけないと。 やがて訪れるだろう「その時」の為に、 自分の気持ちだけではなく、動物の気持ちも受け止めてあげる、 その覚悟を、しておかなくてはならないと。 姿の違う家族をお持ちのあなた。 その覚悟は、ありますか? ・
「小学校」と言われて、あなたが記憶の箱から引っ張り出すモノは何だろう。 個性的な先生の顔だろうか。 様々な行事だろうか。 それともやはり、友達との想い出だろうか・・・。 廃校となる小学校のたった一人の教師は、最後の卒業生3人に最高の贈り物をする。 その贈り物とは・・・? 小さな謎掛け遊びを楽しみながらの宝探しは、読者を懐かしい過去へと誘う。 そして読者は、この子供達とは違う宝を、自分の記憶の箱から見つけ出すのかもしれない。 廃校になる学校には、タイムカプセルを埋める事は出来ない。 けれど・・・ きっとこの子供達の心の中には、小さな箱が埋められたに違いない。 一番大切な想い出と供に・・・。
・ 真っ白い部屋がある。 そこには、沢山のポストカードが貼られていて、 私の目はその一枚一枚に見とれていた。 そこに写っているものは、 どこにでもある駅や、アパートメントや、公園や、海・・・ のはずなのに、 そこに漂っている時間は、色は、音は、空気は、 例えようもないくらい素敵で、どこか懐かしくて、 私は思わず心を奪われてしまった。 自分の過去をこんな風に切り取る事が出来たなら、 どんなにいいだろう。 私の過去をこんな風に写してもらえるものならば、 私は、どんな物でも喜んで差し出すだろう。 またいつか立ち寄った時、 ポストカードは増えているだろうか。 それを楽しみに、わたしはまたここを訪れるだろう。
出来るオンナはね、泣いちゃいけないの。 だって、自分を魅せるモノは、 可愛い笑顔でも、ミニスカートの生足でも、ほろりと零す涙でもないって、 出来るオンナは知っているから。 その為に、頑張ってスキル磨いて、キャリア積んで、ここまでやって来たんだから。 でもね・・・。 これは反則だよ。 こんな風にハートのこんなとこ突かれたら、普通泣くでしょ。 頑張って突っ張ってた気持ちが、もう、やわやわになっちゃうでしょ。 サクラ舞い散るこの季節に、あなたの心を薄桃色の涙で満たす、 不思議切ないストーリー。 これはダメ。 絶対泣くから。 出来るオンナは間違っても・・・ 会社なんかで読んじゃダメ!
この不思議な女子中学生はいったい何者だろう・・・? そう思っているうちに、読者はいきなりその時代に引きずり込まれることになる。 勾玉(マガタマ)が力を持ち、妖(ヨウ)が生息する時代。 そこには己の力を操る人間が住み、結界が張られた村がある・・・。 現代と古代を繋ぐ、壮大なストーリーの第一部は『古代編』。 次々に視点を変えて物語りに深く入り込ませる作者の手腕は見事。 史実に基づいた古代テイストも相俟って、読者は古の日本の虜になるに違いない。 もう一度言うが、これは時代を繋ぐ壮大なストーリーの第一部。 次の時代に繋がる鍵が、お話のあちこちに隠されている。 ぜひ、それを見つけながら読み進めていって欲しい。 さあ、古代への扉を開ける準備はできましたか?
バリバリのアクションものを期待すると、肩透かしをくうかもしれない。 のっけから飛んでくるのは、拳ではなく、ギャグの嵐だ。 この小説は、例えばコミック雑誌に似ている。 一話読みきりタイプのお話は、武術を凝らした格闘シーンあり、ちょっと泣かせる語りありと、読み手を飽きさせる事がない。 そして特筆すべきは、キャラの濃さ。 後々明かされるその過去も含めて、『A』のメンバーはかなり個性的なツワモノ揃い。 一筋縄ではいかない面々だ。 この強烈至極なスナイパーチーム『A』の・・・。 さて、あなたは誰のファンになる?
大人だから避けられない現実があり、大人だから消せない過去がある。 でも、そこから逃げてはいけない。 逃げないのが、大人・・・なのだから。 大人色の切ない文章で、この小説はそれを教えてくれる。 小説の章は、車のギアチェンジで繋げられて行く。 彼女の迷った心を乗せた車は、揺れながら何処へ辿り着くのか・・・。 その行き先は・・・どうか、あなたの目で確かめてくださいね。