月星大豆さんのレビュー一覧
爽やかな恋愛の中に 強烈なエロティシズムが潜んでいる、そんな詩集です。 とても微笑ましい、恋愛の入り口を掻い潜ったばかりの彼女。 でもその恋愛力とでも言うべきパワーはこれからの彼女を彷彿とさせ、小さくしかし激しく熱を放つ情愛を思い起こさせます。 短いページ数ではありますが、その後の彼女に想いを馳せて、長く余韻を楽しめる作品です。 お試しあれo(*^▽^*)o
死体がひとつ、またひとつ。 全部で12。 犯人がひとり、またひとり。 全部で12。 犯人達は高い鼻で プラチナブロンドの髪を揺らし 薄い唇をして 蒼いオッドアイを持っているのが特徴だった。 オリジナルパーソナリティーであるルウが激しい精神的・肉体的外傷を一手に引き受けた事で死に、ホストパーソナリティーのレインが生まれた。システム内で各々のエゴステイトは明確化し、各アイデンティティーはロクデナシとその取り巻きに対する怨念を顕わにする。 ISH足りうる兄もルウと共に消失し、救われない12のアルターパーソナリティー達はロクデナシの排除に立ち上がる。 シナモンパイを握り潰すかのように奪われるロクデナシ達の命。 そして最後の鉄槌は傍観者に振り下ろされ、15人の物語も幕を下ろした。 事実はセピアに染められて……
オレから溢れ出る愛を受け止める受容体は無く、オレのそれに注がれるべき愛も無い。 大切だった掛け替えの無い関係を壊しても、そして大好きな女性を傷付けてしまってさえ構わないと思う程、オレに向けられる愛に渇望していた。 しかし、願いは叶うべくもない。 何故なら、オレにその愛を提供できる人物はこの世に2人として居ないから。 そしてその人物とは……。 浅海ユウが渾身のエログロを表現しようと書き始めたこの小説。いつの間にか可愛い女子に手ぬるい筆者の手に依り、丁度いい程度のエロスに落ち着いて、結果作品のステージがUPした。 スリリングな凌辱シーンも、焦れったいような恋心も、読み進める程に切なく読者の胸を締め付ける。 この若き主人公達に、輝く未来が訪れん事を願って止まない。 ξ(-人-)アーメンアッラーナンマンダブ
人はそれぞれ、その人を取り巻く時間の中に居る。 しかし俯瞰して見ればそれは、普遍的な速度で一様に流れている。 Aを見詰めるBの世界はAB共通の時間軸に有るが、Bに見られている事を知らないAは、Bと今、時間を共有している事にも気付かない。 しかしまたマクロ的な視点で見れば、同じ地球上、同じ場所で同じ時間に存在しているという、かなり稀有な同一性を有するAとBである事は間違いない。 人は思うと思わざるとに関わらず相引かれ合い、相すれ違い、しかしそれらは皆、純然と同一時間に在る。 それぞれがそれぞれの軌跡を辿り、増大したエントロピーは枝葉を広げた大樹となるが、そこに少なからず関係を持ったという事実こそ真実。 同じ枝で同じ時に花を咲かせる偶然こそが奇跡なのだ。 溶けたアイスを旨いと見るか、甘過ぎると見るかは、それぞれの心の温度が握っているのだろう。
奈緒の願い・沢木の願い・岸本の願い・父の願い この作品。創作を志す全ての人達に読んで貰いたい。 そして自分の技量と見比べて貰いたい。 10人の内3人はとても勝てないと諦めて、6人は比べる事すら出来ない自分の作文に呆然とし、残った1人はなんとか追い付こうと必死に縋る。 残ったその中でもほんの一握りしか、ユウさんと同じ景色を見る事は無いでしょう。 圧倒的筆力を、ページをめくる貴方の指が感じる作品。 この作品にケチつける奴ぁ俺んとこに来い。
自傷行為からミュンヒハウゼン症候群も考えられましたが、これは解離性同一性障害か離人症ですな。 幻聴がみられますがこれは一過性の物でしょう。 ふうむ。良質なタンパク質を摂ってセロトニンの生成を促しましょう。 なに、時間は掛かりますが副人格を主人格に統合させればよいのです。 十分なカウンセリングを重ねて、解離に至ったトラウマを限定し、認知許諾させればいい。 そうですな、メチレンジオキシメタンフェタミンを服用し、多幸感の中でグループセラピーを試みましょう。 ではまた来週。あっ、来週は学会がありますので再来週の火曜日に。 お薬の服用法は薬局で聞いて下さい。 では、お大事にぃ。
【ネタバレ注意】 刻々と移り行く時間。 僕と同じ時空に有る全ての生き物は、その歩みを止めること無く、僕と同じ速度で死に向かって進んでいる。違うのは死迄の距離だ。 コーヒー店で見掛けた彼女は偶然にも次の店で一緒になった。彼女は僕との運命を感じたに違いない。 僕は彼女との恋愛を急速に発展させ、幸せの内に身体を交わす。彼女は僕の猫にも気を遣う繊細な女性である筈で、そして土曜日には再会する事を約束したんだ。 しかし僕は気付いた。部屋に猫など飼ってはいない事を! 妄想が作り上げた彼女へ向けて無駄に垂れ流してしまった幸福を回収しようと試みるが、もう後の祭り。僕はその気持ちのまま時の列車を降りる事にした。檸檬を置き土産に。 僕の一日は或る共時態の断面を境に変化しなくなる。そしてそれは永遠を意味する。 長い、長い一日は始まった。
「またやり直しか」 そう呟いた彼の剰りにも端正な横顔からは、氷のような冷酷さが漂ってくる。 リーンカーネーションの果てに辿り着いた今生でも、彼が一番欲している『彼女の心』を手に入れる事は出来なかった。 今宵は新月。悪魔との契約を果たすべく、彼はまた1人、転生していない魂を葬り去る。 悪魔に魂を売り渡して迄、罪で罪を塗り固めて迄も手に入れたい人が貴方には居ますか? そんな究極の愛を、リアリティー溢れる設定に裏打ちされたサスペンスに乗せて送るノンストップホラー。 ページをクリックする指も、最後までノンストップ間違いなし! さあ貴方も 体感せよ!
『困難上等、壁上等!』 田舎からやって来たごく普通の女子高生莉奈が気になって仕方ないのは、校内で一番目立っているヤンキーの恭平だった。 ◎青春ドラマの全てのエキスが詰まった逸品。 ラブコメの楽しい雰囲気に読み進めると、来るわ来るわ感動の大波小浪。 伏線を完璧に拾い上げる造り込みの丁寧さは、作り手としても見習わなければいけない姿勢です。 そしてその切なくも感動的なラストは、2人のこれからを照らす希望の光を確かに感じさせてくれます。 この感動は、読まなきゃ解らない。
女は渇望していた。 その高い社会的地位と自らの器を充足させ得る愛に。 持て余したその身体を満足させるだけの男は現れず、煩雑な日々に愛しい我が子の気持ちは離れてしまう。 亮太との謂わば必然の邂逅が葉子にもたらした衝動は、徐にその心を侵食していき、規範もろとも破壊する。 最後に彼女が選んだのは、亮太の狂気に満ちた太く固い牙を、自らの潤んだ器に受け入れる事だった。 いなばさだかずが読者に問い掛ける問題作。 取り扱い注意。
そんな使い古された凡庸な誉め言葉では足りません。 それ迄はそれぞれが牙を削がれ、現実に絶望し、羊の皮を被って、残りの人生をただ諦めと共に享受するしかなかった、6匹の狼達。 彼らが運命の糸に手繰り寄せられ、誰もが触れる事さえ出来なかった巨悪に立ち向かって行く。 人生のピークをとっくに過ぎてしまった彼らが自らにむち打ち、鈍ってしまった身体を奮い立たせ、その信念を貫こうとする姿は圧巻です。 人物の描き分けや役割分担。施設や小道具、職業や内情等の緻密な設定。戦闘や殺戮シーンのリアルさ。そこに織り成される力関係と人間模様。 半ば荒唐無稽とも思える展開を納得させてしまう筆力フデヂカラが凄まじい! 読み終わった後、思わず体重計に乗りたくなる『カロリー消費系』ノベルです。 カロリー消費量 1635kcal ヾ( ´ー`)ノ~お試しアレ☆彡
こんな思いって有るんだなぁと、つくづく噛みしめました。 あくまで楽しげな、そしてほんのり甘い雰囲気で進む裏に潜んでいる、ミステリーの香り。本来恋愛物が苦手な俺がその香りにページをめくり続けると…不覚にもコメカミが痛くなる程泣かされてしまいました。 物語のピークを過ぎてからもグダグダにならずに読み手を惹き付け続けるエピソード。 そして最後に、それはそれは綺麗な終わりで涙を誘い、また読み手を裏切るその展開。 書籍化なんかすっ飛ばして映画化されてもいい、今すぐ。そして映像世界に負けない書籍を改めて味わう。 そんな底力の有る作品です。 読んだら皆さんもそう思います、絶対☆彡
絶対的な生命力と人智を超えた運動能力を持つ「人ではない彼」が、ほんの気紛れから拾ってしまった少女。 一時の戯れだった筈のその時間が、彼に言い様も無い癒しをもたらした。 日々を重ねる毎にそれは必要不可欠な物になり……。 本能・葛藤・慈愛・後悔・そして訪れる終焉と慕情。 きめ細かい叙情表現が彼と読者の心を繋ぎ、ラストには涙を誘います。 短い中に凝縮されたエピソードは、ひとつの無駄も無く貴方に語り掛けるでしょう。 是非一読あれ☆彡
この世は捨てたもんじゃない。生き続けてさえいれば哀しみも乗り越えられるし、素敵な発見も有る。そんなるいさんの「生きなさい」という愛のメッセージに溢れた作品。 この世に何の未練も無い、いや寧ろ死を望んでいた若者が、死に別れた筈の母親と再会して開眼していく様は、実に気持ち良く読ませて貰いました。 悲しいシーンでも無いのに不覚にもラストで涙してしまう、そんな「心に優しい」佳作です。 是非みなさんもどうぞ☆彡