とある雪の降る春始めの３月… 独りの少女〔涼寺 鈴歌〕［17］の運転する原付バイクに運送会社のトラックが対向車線を越えて少女のバイクに突っ込んだ。少女はバイクから放り投げられ、即死した。トラックはその場を逃げていった…。 事故発生から六時間後… 。 近くにある辻運送の社員〔山田 信治〕［29］がその現場に倒れていた鈴歌を発見した… 連絡を受けた警察がたどり着くとすぐさま現場検証と遺体の回収に当たった。 「こりゃーひでぇなぁ…。もう原型留めていねぇな…」と警察の一人がバイクを見て言った。 彼の名は柳川 智靖［30］。 「轢き逃げ…としか思えませんね…」と少年が言う。少年の名は涛瀬 洵［22］。 「ただの轢き逃げなら相当タチの悪いヤマだな…」と柳川は呟く。 「兎にも角にも、犯人は多分この近くに住んでいると思いますよ…」と洵が言った。「んなこと分かる分けねーだろ」と柳川が頭を抱える。 「だってこんな裏道使うのって、地元の人ぐらいですよ。多分相手は多分運送系の職務に就いているか…。その点は、このバイクのカゴについた深緑色の塗料は業務用ナンバーのモノと考えてみた方が高さ的にも一致します」と洵と言った。 「流石だな。たった少しの手掛かりでそこまで考えつくとはな…」と柳川が感心する。 「でもまだ決まったワケじゃないですし、それに運送系の職務は沢山あるし、他の地域の場合も視野に射れておかないと迷宮入りだけは避けたいですし、それに被害者の遺族にも顔向けが出来ませんから…」と洵は苦笑いを浮かべた。 「そうだな…。とにかく一度署に戻ろう。行動はそのあとでもいいだろ」と柳川が言った。 「そうですね」と洵も同意する。 「そういえば今日から新人がウチの部署に入るらしいな。誰なんだ?」と柳川が洵に問いかけた。 「確か豊臣 薫って名前でしたね。まだどんな人かわかりませんけど…」と洵が言った。 「まあ会えばわかるだろ」と柳川が言った。 「それもそうですね」と洵も同じ意見であった。 二人は車に乗り込み署に戻った。