花咲璃優さんのレビュー一覧
思わず目を眇めてしまうような眩しさと包むような温かさを併せ持つ光があるお話でした。 世界は理不尽に塗れてると、だからこの世界は嫌いだと、そう言った朝日ちゃんの瞳は透き通るように真っ直ぐ純粋に、世界を見つめているのでしょう。 初恋の人を忘れられず、ずっとその人の生まれた意味としてピアノを弾き続けてきた連君もまた、真っ直ぐで純粋で。その繊細さと綺麗な想いが溢れたピアノを奏でるのでしょう。 そんな二人の奇跡は青春を思わせるには十分でしたが、今同い年の私は青春を謳歌しているかと聞かれるといまいちピンときません。きっとまだ眩しい光の中を走っている真っ只中だから気付かないだけで、何年も走り続けた先で振り返った時、あんなに眩しい時代があったのだと懐かしく思うのだと思います。17歳が過ぎてしまった人も二人と同い年の人も、まだ年下の人も各々に17歳という時間を鮮烈に伝えてくるのではないでしょうか。
3月11日の東日本大震災から月日は流れ、11月下旬。 時間は経てど、被災者の心の傷はまだ癒えていない事でしょう。 それなのに、今ではあまり、震災関連のニュースは見ません。 その事から、"風化"が進んでいるのでしょう。 そんな中、この作品の作者様が"風化しないように"と考えたこの作品。 生きたくても生きられなかった人達___ 生きてて欲しかった人が生きていなくて、自分だけ生き残った人達___ この双方の思いを生々しくも美しく、強く書き上げられています。 生きたくて、頑張ったけど生きられなかった人達がいる事を忘れないように。 震災の中、生き延びた人達のこれからに幸あらん事を。 これを読めば、強く、そう考えられるのではないでしょうか?