洋梨さんのレビュー一覧
「独りでは生きていけないのに、誰かと繋がるのは難しいね」 双子の双葉と楓。幼馴染の朔良。幽霊の木花。人の想いって見えないから難しい。勘違いも遠回りもたくさんしたけれど、彼らが自分たちで踏み出した一歩はとても大きく、成長した姿に涙せずにはいられなかった。 作者様の圧倒的な表現力、脱帽です。繊細な情景描写と明瞭な心理描写。音、匂い、色、感触、まるですべての感覚を乗っ取られてしまったんじゃないかと思うほど文章に力と魅力がありました。 ひとりひとりの言葉や説話の深みが物語をより豊潤させ、「どういうこと?」と思案する時間を与えてくれる。読書って楽しいと再確認させられました。 あわよくば、私も朔良のピアノが聴きたかった。 読み始めたら中毒です。大好きです。是非御一読ください。
僕らに愛を、ありがとう。 あした、地球に星が降る。あした、僕らの地球が終わる。そんなとき、貴方ならどうする? 泣く? 笑う? 喜ぶ? 悲しむ? 大切な人にあいにく? はたまたいつもと変わらない日常を過ごす? あした、地球がおわる。そんな日を綴った短編集。 作者さまの多彩な表現力と芯のある文体がとてもすきです。この物語に出てくるそれぞれのたった1日を、最後の1日を覗けたこと、とても幸せに思います。 是非、ご一読ください。読後、やさしい気持ちになれることは間違いありません。
「鈴川くんといえば?」 そう聞かれて彼を悪く言う人はいない。生徒会長、サッカー部副キャプテン。誰からも好かれて慕われる、彼のような人を他に見たことがない。 そんな彼が突然放送室を乗っ取った。37分間、誰も予想していなかった鈴川くんの放送が始まる______。 他にはない構成、思わず引き込まれる鈴川くんの一言一言。その言葉の重みが自分自身に降りかかってくる。高校生だけじゃない、どこにでもいる、誰にでも言える。きっとこの物語のどこかに自分が、貴方がいるはず。 ちっぽけなクラゲを救う鈴川くんの勇姿を、彼の声を、どうかみなさんも見て聞いてほしい。これは他の誰かの物語じゃない。きっと自分自身の物語。 素晴らしい傑作です。是非御一読を。
彼の何が、わたしを変えたのか。 容姿が整っていて、それなりに男遊びをして。長続きなんてしたことなかったし、そもそもきちんと人と付き合ったことがなかった。それなのに、合コンで出逢った彼と付き合いだして、もう3年になる。 ドラマチックな出逢いでも、トクベツな何かがあった訳でもない。でも何故かヒトは恋に落ちるし、きっとそこに理由や意味なんてないんだろう。 "これを運命と呼ぶなら聞こえがいいけれど"、運命だとかそんな言葉を使わなくたって、自分と彼の間にはよくわからない愛のカタチがきっとある。それってすごくステキで、純粋で綺麗な愛情だなあ。それでもってきっと世の中の恋愛ってそういうものだよなあと思います。答えがない、その通りなんですよね。 恋をしたくなる9項。ぜひ、御一読を。
紙飛行機の、軌道にのせて 彼らの夢が、希望が あおいそらに、飛んで行く * 夢がある人を凄いなあと思う 受験生という義務感で 参考書を開いて ペンをとる 勉強する なんのためか わからない勉強を 私もついこの間まで受験生だったので、この主人公にはかなり共感しながら読ませていただきました 朝倉くんとの何気ない会話から 夢というものを、見つけた 紙飛行機みたいに 希望は空高く とんでゆくんだね きっと、きっと、叶うね 自分の進路に迷っている方、これから受験生になる方、夢を追いかけている方、すべての人たちに2人の会話を覗いていただければと思います。ぜひ、ご一読を。
自分の語彙力でこの物語を語ることは到底無理な気がしてなりません。ですがどうしても、1人でも多くの人にこの物語を読んで欲しいのです。私が切に願うのはそれだけです。 戦争は酷い物です。でも現代を生きる私達は、知っているようで本当は何ひとつ知らない。 正義感溢れる総馬が正しいとは思わないし、無駄なものは切り捨てる和泉が正しいとも思いません。けれど、お互いにお互いの違った部分を本当はきちんとわかっていて、そんな自分にないところに彼らはお互いに救われているのでしょう。現在の日本には、総馬のような人も和泉のような人もいます。どちらが正しいなんてのはわかりません。でも、ナムトに向かった彼らの愛はとても美しかった。人は人を変えることができるし、愛は1番人を強くするのでしょう。涙が溢れて止まりませんでした。 是非、御一読を。これこそ、今の私達が読むべき現代小説です。どうか、ページをめくってください。