秋野桜さんのレビュー一覧
天使は泳げない。 青い空の飛び方は知っていても、青い水の泳ぎ方は知らないから。 深みに溺れ、沈んでいく。 だけど、もがいた末に気付くものがある。 清らかな羽は濡れて使えなくても、新たに得たものがあるはず――。 傷を舐め合う二人は、ある意味似た者同士なのかもしれない。清らかさを欲したけど、それを上手く得られなかったのかもしれない。 好きだけでは叶わない恋がある。それでも簡単には諦められない。 その末に辿り着いた、恋の難しさや醜い部分。 二人はそれを知り得たからこそ、時が刻まれていくことを知る。 どんなに虚しく思えた時間のループにも、抜け出す方法があることを知るのでしょう。 きっとまた、清らかな空を飛ぶために。 濃密な世界観に圧倒されます。ぜひご一読を。
青春、17歳の時期って。まさに空を泳ぐという表現がぴったりだと思います。 どこまでも続いている広い世界。綺麗なものだけが溢れているわけでもない。 理不尽なことも、納得出来ずに分かり合えないことも、たくさんあるでしょう。 進むことさえ、その場に居ることさえ息苦しくもなる。だけど真っ暗な世界にも、必ず朝日は昇ってくるのです。 そんな光の名前を持つ彼女と、切ない思い出に合わせて綺麗な音色を奏でる清らかな名前の彼。 2人の生きてきた道で、ひとつひとつ起きた奇跡。それはまた、彼と彼女が出会うことで奇跡を呼び起こす。 小さくても、重なればとても大きな奇跡。難しい時期を生きる彼らには、それは希望であったように思えます。 大丈夫、彼らなら溺れはしない。溺れているつもりでも、きっと不恰好なりに泳いでいるよ。 だって2人の手は、今繋がれたのだから。
失敗だとさえ思わなかった。 でも自分の本当の感情に気付いたとき、少しの後悔も生まれた。 失敗だと思った。 だけど素直になれば、少しラクになれた気がした。 失敗から生まれるのは苦しいや悲しいといった感情だけじゃない。 失敗をきっかけに、未来に繋がる新たな道が作られていく。 女の子ならではの葛藤、後悔、そして本音。 そういう繊細な心情が失敗のエピソードと共に、すっと胸に沁み込む感じがしました。 朝が来て、昼、夜が訪れて、そしてまた夜明けと早朝が巡ってきて。 繰り返しながら進む日々の中にある失敗も、夜明けが来るように少しずつ繰り返しながら成功に変わっていく。 失敗も成功のもとだということを、しっとりと希望を持たせて感じさせてくれました。 素敵なお話をありがとうございます。