汐見 夏衛さんのレビュー一覧

★★★★★
2017/03/15 19:45
働くこと、恋すること

彼のことをとても大切に思っているのに、ウェディングプランナーの仕事に追われて、彼に会う時間もなかなかとれず、いつしかぎくしゃくしてしまって…。 仕事をもつ女子なら誰でも共感できる、仕事とプライベートの両立の難しさ。 うまくいかないことばかりで歯がゆい状況の主人公の気持ちに深く共感して、前半は本当に切なく悲しい気持ちになりました。 そして、後半。どんな結末が待っているのか、ぜひぜひ見てみてください! 決して後悔しませんよと断言できる、素敵な読後感の作品です! 一気に引き込まれて一気に読んでしまいました。 働く女子、必見です!

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★★★★★
2016/12/08 00:25
「君」とは誰のことか。

君のために。という、シンプルながらも目を惹かれるタイトル。 このタイトルの「君」とは、一体誰のことなのか? 考えながら読んでみると楽しいのではないかと思います。 きっと予想を裏切られるのではないでしょうか。 主人公の奈々が、ただのクラスメイトである幸野君と、目的もゴールも明かされない不思議な旅をしているシーンから始まります。 二人の絶妙な距離感と軽快な会話を楽しんでいると、少しずつ話の全貌が明かされていって、 次第に、奈々の切ない恋の模様が見えてきます。 大切な幼馴染と同じ人を好きになってしまう。 大切だからこそ言えなくて、でも苦しくて。 そんな思いに共感しながら読み進めると、最後には、思いもよらなかった真実が明らかになります。 先が気になって読む手が止まらない、すばらしい構成の作品でした!

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★★★★★
2016/10/27 20:22
天使はきっと泳げない。

「天使はきっと泳げない。」という一文で始まる作品。 この一文に目を惹かれた人は、読んだらきっとぐいぐい心まで持っていかれることでしょう。 クピド=キューピッド。 ずっと好きだった幼馴染。その恋のキューピッドになってしまった天の邪鬼でお馬鹿な女の子の、絶望から再生への瞬間を鮮やかに切り取った短編小説です。 とても切なくて、ドロドロしてて汚れてて、それでいて爽やかで清らかな。 一粒で色んな味が楽しめる素晴らしい作品でした。 ぜひとも読んでみてください!

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2016/09/16 00:20
読むべき作品。

一言でいうと、ものすごーく勉強になりました! 最初から最後まで、知らなかったことのオンパレード。 作者の氷月さんの作品にはいくつか病気を取り扱ったものがありますが、そのいずれも素晴らしい作品です。 ただ病気を感動のネタとして使うのではなく、非常に深いところまで調べて、患者の立場に立って書かれたのが分かるのです。 本作も、非常に専門的で難しい内容ではあるのですが、エッセイ仕立てなので、医療ドラマを見ているような感覚で読めて、内容は充実しているという、とてもおいしい作品。 特にこれから子供をもつ可能性がある方は皆さん読むべきでしょう。

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2016/08/02 20:02
好きな人のためにできること

短編ですが、そうとは思えないほど密度のある話です。 ある日突然、黒かった髪を金色に染めた主人公。 その理由は……。 好きな人のためにできることを必死で考えて、誰に何を言われようとそれをやり遂げる。 とても魅力的な女の子です。 まだ高校生だけど、彼女は本当の愛を、無償の愛を知っているんだなと思いました。 切なくて、優しくて、ときどき笑える、素敵な小説です。

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2016/05/29 07:42
美しく静謐で透明な物語

海辺の町の狭いアパートで二人暮らしを始めたばかりの、幸福そうなカップル。 でも、二人には秘密があって…。 まずタイトルに惹かれて読み始め、読んでみるとあまりにも美しく透明な描写の虜になり、その世界観に溺れてしまいました。 すべてが静かに淡々と語られるけれど、自然と涙が滲んできました。 とにかく情景描写とイメージが美しく、心理描写が切ない。まるで映画を観ているような気持ちになります。 これぞ、純愛。ぜひ読んでみてください。

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2016/03/31 17:33
ヒロインのライバルにも物語がある

少女マンガの王道的なヒロインを想像してみてください。 そして、その王道ヒロインの恋のライバルとして登場する女の子を想像してみてください。 そう、その子です! 今あなたの頭に浮かんだ、すごく可愛いけど自分が美人だとわかってて性格が悪くて意地悪な女の子! それがこのお話の主人公です。 王道ヒロインが主人公の話を読んでるときは、可愛くて意地悪なライバルが憎たらしくて仕方ないものですが、この作品を読むと、 「そうか、どんな子にも物語があるんだよな」としみじみ思います。 清々しいまでの嫌な子ぶりを発揮する前半から、ほっこりするラストまで、存分に楽しめました。

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★★★★★
2016/03/03 20:07
切ない、けど輝かしい

まず、タイトルに惹かれました。 aona様のネーミングセンス、どれもこれも大好きです。 そして、ストーリーも素敵。 最後まで先が読めなくて、このあとどうなっちゃうの!?とはらはらです。 ページをめくる手が止まりませんでした。 とても切ない恋の話です。 でも、二人が深く思い合っていることが伝わってきて、胸がじんわり温かくなって。 読み終えたら、世界が輝かしく感じられる気がしました。 それはきっと、風景描写が素晴らしいからだと思います。 窓から射し込む光や、降りしきる雪、春を感じさせる空。 主人公の目に映る世界が美しいから、こんなに温かい気持ちになれるんだな、なんて思いながら読みました。 素敵な作品ありがとうございました。

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2015/12/11 21:01
悲しくて温かい恋の話

全身の筋肉がだんだんと衰えていき、歩けなくなり、話せなくなり、表情さえ作れなくなり、最後には呼吸さえできなくなってしまう。 そんな不治の病に冒された恋人と共に過ごすクリスマス。 やるせなくて、悔しくて、悲しくて、切ない。 それでも彼らは誰よりも深いところでつながり、愛し合っている。 抗うことのできない時の流れの中で彼らが愛を育んできたことが伝わってきて、それでもやはり別れの時は刻一刻と近づいていて、読んでいて苦しいほどでした。 ALSの治療薬の研究開発を世界的に支援しようという動きもあります。 だからこそ、このような作品を読んで、いかに恐ろしい病気かを知っていかないといけないと思いました。

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2015/11/23 18:17
ありふれたカップルの、特別なクリスマス

オトナ女子ならきっと共感できる! (↑すみません、使ってみたかったんです笑) どこにでもいるような同棲カップル。 だれもが感じたことがあるような悩み。 でも、この悩みって、女性ならみんな共感できると思うんですよね。 同棲をはじめてから見えてくる色々な違和感や、将来を見据えての焦燥や不安。 そんなありふれたカップルの、でも彼らにとってはとっても特別な1日について、その心の動きまで丁寧に書かれた短編小説です。 3分の2くらいは分かる分かる!と頷きながら、そして最後の数ページではにまにまほっこり読ませていただきました。 もうすぐクリスマスが見えてきましたね。ぜひ読んでみてください♪

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2015/11/10 23:22
切なくて美しい物語

短い作品ですが、それを感じさせないほどの深みと、大きなテーマを抱いた小説です。 ホスピス病棟で働く看護師の女性・日向子のもとに現れた、かつて愛した男性・在原。 お互いに愛し合っていたのに、事情があって結ばれることが叶わなかった恋。 それでも大切にしてきた思い出の男性の最期のほんのひとときを、看護師と患者として一緒に過ごした数日間が描かれています。 本当に切なくて、哀しくて、 それなのに心が温かくなるような、美しい作品です。 ぜひ読んでみてください。

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2015/10/24 08:48
極上のファンタジーをあなたに。

これぞ異世界ファンタジー! と叫びだしたくなるほど、すばらしい作品でした。 各地を旅しながら暮らす放浪の民。 不思議な色の髪と瞳を持つ少女。 争いと婚姻による和平を繰り返す隣国。 王家の美しい王子が二人、そして王位継承問題。 これらのキーワードに反応した方は、最初の数ページでこの世界観に魅入られること必至です! 緻密に練られた設定 丁寧な描写 魅力的な登場人物たち ご都合主義ではないシビアなストーリー 本当に面白くわくわくして、時に切なく苦しい、極上のファンタジー小説。おすすめです!

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2015/10/23 22:28
心の声は誰にも聞こえない、けど。

私はもうすっかり大人になってしまった。でも精神的にはまだまだ子供、と思っていたけど……こういう悩みからはいつしか遠ざかってしまったなあ。 自分の嫌な所、好きになれない所ばかり目について、鬱々とするばかり。変わりたくても変われない。 むしろ変わってしまったら自分じゃなくなってしまう気もするし。 大人からしたら、思春期特有の悩みと一言で片付けられてしまうかも。誰しもが大なり小なり自己否定の気持ちを持っているものだ、それが思春期なのだと。 でも、まだ片足くらいは思春期に残っている私には、ここに書かれている気持ちが痛いほど共感できた。 叫びだしたいほどの苦悩。暴れ狂う気持ち。それらが淡々とした語り口で書かれている。 誰にも聞こえない心の声。 でも、それを文字として表現する力を、手段を、作者様はもう手に入れているのだ。

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2015/10/23 22:02
強がりでピュアな可愛い恋物語

思わず自然に微笑みが浮かんでしまうような、ほのぼのとしたピュアで可愛い恋のお話です。 ハロウィーンパーティーの夜、特別なメイクアップ。 メイクを施すのは年上のお姉さん。 メイクを受けるのは年下の男の子。 どちらも、相手に余裕があるところを見せようと、強がっています。 それでも隠しきれないときめきと緊張。 二人ともとても可愛いです。 ほっこりしたい方、必読です!

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2015/09/02 23:51
いい!

……と叫びたくなるほど、いい作品です。 終始、口角をあげたまま読んでいました。 とてもほがらかでほのぼのとした雰囲気。 かわいらしい二人。 うーん、いいです。 福岡の高校を卒業して、東京の大学に進学したサクラとタケル。 なぜはるばる故郷を離れて東京に来たかというと、サクラが高校時代の先輩……(以下、省略。これ以上はネタバレになりそうなので!) さて、二人の関係は? 高校から大学って、突然自由になって解放されて、大人になった感じがしますよね。 だからこそ、変わりたい、変わらなきゃ、って思うものです。女の子なら特に! もしかしたら男の子も? 私にもこんな時代があったなあ、と思いつつ、微笑ましく読ませていただきました。 とってもかわいらしい、小さな恋のはじまりのお話。 オススメです。ぜひ読んでみてください!

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2015/08/31 22:21
ネガティブな二人のハイテンションラブコメ

最高に面白くて、最高に胸キュンなラブコメです! 主人公のオブチは、平凡な見た目の普通女子。 自分の外見にも内面にも自信がもてないネガティブさん。 しかも意地っ張りで不器用で素直じゃない。 (ただし、ギャグセンスとツッコミスキルは秀逸!) 対するヒーローの吉野先輩は、オブチがドン引きしてしまうほどのイケメン。 そして成績も性格も運動神経もいいという王子様。 (ただし、実は内面に難あり!) 二人の言い合いは最高にテンポがよく、読みながら噴き出しそうになります。 が! ちゃんと胸キュンポイントも満載! 不器用で意地っ張りでネガティブで素直になれない二人の可愛さに、あなたも悶えてみてください♪

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2015/08/28 15:42
久しぶりに涙がぽろぽろこぼれました。

ボタンをかけちがったように、不自然で不安定な形になってしまった「俺」の家族。 それぞれの思いを胸に秘めつつも、それぞれが何気ない顔で生活を続けている。 そんなある日、「俺」の妹の結婚が決まった。 そのとき「俺」は決意する。 家族を変えるために、自分が行動を起こさなくてはならない、と。 とても感動的な実話です。 かなりドラマチックな展開ですが、まさか実際に起こったことだとは。 久しぶりに小説を読んで泣きました。 すこし独特で目を惹くタイトルが、本編の空気感を体現しています。 おすすめです。 ぜひ読んでください。読むべし!

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2015/08/26 17:58
ミントの香りがする爽やかな恋

地元に残った「あたし」と、東京の専門学校に進学した相川 高校を卒業して、大人への入り口に立った二人 未来がどんな色をしているのか、まだ全然わからない そんな二人が久しぶりに会う喫茶店でのワンシーン 「あたし」はアイスミントティーを飲みながら、あいかわらずな相川と話をする でも、前とは違って見える瞬間もあって…… わかるわかる、その感じ! 相川とは、性別の壁を越えて気の合う異性の友人 のはずだったけど…… さわやかです、きゅんきゅんします にまにましながら一気に読みました アイスミントティーがとても効果的に使われていて、短編映画のような印象です おすすめです、ぜひ読んでください!

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2015/08/21 17:23
からみあう現在と未来

運命を変えるべく過去へタイムスリップする時間旅行ファンタジー 特殊能力を持って生まれた者たちが苦悩と葛藤をくりかえす青春小説 個性的な人々が躍動するキャラクター小説 暴走族たちの戦闘が生き生きと描かれるハードボイルド 科学的な知識をもとに書かれたSF たくさんの伏線が張り巡らされ、少しずつ謎が解かれていくミステリー 不器用だが心優しい不良と、まっすぐで純粋な女の子の純愛小説 これらすべての要素が含まれた、壮大な超大作です。 普通ならこれだけ詰め込むと収拾がつかなるなるでしょうが、それをまとめあげてしまうのが、作者の氷月さんの力量です。 とにかくページを開いてみてください。最初の10ページでこの世界観に引き込まれてしまうでしょう。

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2015/07/28 18:02
うつろな大人の恋

とても良い作品を読ませてもらった、という気持ちです。この小説を特集に載せてくださったベリカ編集部さま、ありがとうございます。 なんと言えばいいか、疲れて諦めの滲んだ大人のうつろな恋、と言うか…… すみません、語彙力と文章力が不足しているため、うまい表現が思いつきません。 全体的な表現もとても秀逸で、いつの間にか作品世界に入り込んで恍惚としていました。特に最後の一文には感動です。大人の女性向けの純文学作品を読んだ後のような感覚になりました。 おすすめです。ぜひご一読を。

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