和泉りんさんのレビュー一覧
1ページ完結のショートショート集。 登場人物の年齢、性別、ときには種(?)もバラバラ、舞台とする場所や時間も違う。ときには友情を描き、ときには童話、はたまた物語の導入のようなお話も。 それらバラバラの物語のすべてに、どこか宮沢賢治を思わせるノスタルジーが漂います。 個人的には『星を見る人』が一番好きです。 静かなカフェで、お茶が運ばれてくるまでのわずかな時間に、ぜひご一読を。
五十の女が、自分の営むパン屋で働く若い二人を静かに見守る。 その視線の先に、時折映る自分自身の過去。 後悔も諦念もないわけではない。でも、そうした感傷に囚われるでもなく、捨ててしまうでもなく、 寄り添いながら生きる。 苦い過去を振り返りながら、それでも凛として顔を上げる姿が目に浮かびます。 そして、なんとも言えない余韻が残る最後が本当に素敵です。 しとしとと降る雨を窓の内側から眺めているような感傷。それでいてどこか清々しい。 そんな素敵な雰囲気の作品でした。
中学の蒼がどこか自分と似ていて、ついつい重ねて読んでしまいました。 自分もそれなりに辛い小中学時代を送ってきたので、読んでいて涙が止まりませんでした。 でも自分は高校からやり直せたので、今思えばどれだけ恵まれていただろう、と実感しています。 よく見える人ほど生きにくい。 自分の嫌なところ、愚かなところ、そういうものって見ないようにすれば楽なのに、見えてしまうと何より苦しい。 生きていれば人を嫌ったり人に嫌われたり、そうやって辛い思いをすることっていっぱいあるけど、 一番不幸なことってきっと、自分自身を嫌ってしまうことなんだと、 この作品を読んで思いました。 自分の過去のこと、今のこと、これからのことを考えさせられる作品でした。 出会えて本当によかったです。ありがとうございました。
惚れました。 あまりに美しくて、どうしようもないくらいに心惹かれてしまいました。 こんなに短いお話で、こんなに感動したのは初めてです。 だから読み終えて真っ先にレビューを!と思ったんですが、他の方々のレビューが完璧すぎてもう言葉が出ません(笑 色の使い方が非常に巧みで、表現が本当に綺麗。 「淡い」というか、「色鮮やかで、それでいてどこまでも透明」というか。そんな印象を持ちました。 本当に感動しました。これが文才か、と。 拙いレビューでごめんなさい。 素敵な作品をありがとうございました。