かわせつきひとさんのレビュー一覧
恋を意識し始めたあの頃、素直に想いを伝えられた筈が物を知る毎に慎重になり、いつしか計算尽くしで言葉を選び、本当に欲しいものがどんどん遠退いて行く。たった一言。ただ素直に『好き』と言えれば良いのに……。 作中の愛華と達也はちょっと違いますが、想いが成就した先の事を考え過ぎて拗らせてしまった事は、やはり大人ゆえの事情かと。パートナーを選ぶ際の価値観って色々あると思うけど、最後に行き着くのは、やはり一緒にいて楽しい相手を選ぶ事が正解だと感じました。素敵なお話でした。二人ともお幸せに~
……とは少し違うと思いますが、でも正体が解った時点で関係が終わってしまう緊張感は本当です。 かなり特殊な状況ですが、一年間色んな妄想を膨らませた後に露になる摩訶不思議な同居相手。今後の夢膨らむ展開に、一読者としても思わず含笑いしてしまいそうな楽しい作品でした。
かねてより不気味な噂が絶えない恐怖の映画館。親友にゴリ押しされて渋々足を運ぶものの、しかしそこで彼女が目にする物は、噂に違わない数々の怪奇現象。後で気付いてジワジワと恐怖に襲われる不思議な感覚。だけどこの映画館、そんな恐怖の反面、街でよく見掛ける煮え切らない男女を繋ぐ恋のキューピット役も兼ねてたりして。読後、この街に語り継がれる素敵な都市伝説が脳裏に浮かびました。
恋人の困った言動に動じない自分を強さと履き違える男と、我が儘な自分の言動に反応してくれない相手に、真剣に向き合ってくれないと勘違いして不安になる女。拝読しながらこんな関係で捉えて楽しんでいました。自身の複雑な感情に悩むままに違う異性を見て、改めて自分の恋人の素晴らしさを再確認出来る。読んでてとてもいい話だと思いました。体験主義万歳。
冒頭からの、失職をきっかけに自身の新しい価値観を見出だし、親の反対を押しきって新たな道を進み出す、詩織ちゃんが強くなっていく過程の所からすっかりお話に入り込んでいました。お店でおもてなしする来客の方々は誰しもが心に深刻な悩みを抱えている人ばかり。一方そんな彼等を迎える店主・雄也君の無口でぶっきらぼうな接客を眺めながら、言葉は要らない。気持ちはこの一皿あれば十分に伝わるから……そんな自信が、そして人間的な温かさが、文中に漂う湯気と一緒に伝わってくるようでした。心の籠った料理ってやはり良いですね。人を元気にしてくれます。
作品を読み進めるとハッと気付かされます。それはまさに、誰しもがここまで歩んできた人生の中で唐突に目の当たりにしたり、または立ち往生したりして懸命に乗り越えてきた苦い経験。人はそれを糧にしていつしか本物の大人になっていくけれど、そんな過程をこの作品の中で見事に表現されていると思います。気付くとヒロインにすっかり自己投影している事受け合いです。素敵な作品でした。
嘘も方便とはよく言いますが、しかし気になる異性に接近する為に使う嘘って、なかなかの技量がいると思われます。地雷を踏まぬよう、気持ちを逆なでせぬよう……と目論みつつも、しかし作中で露になる、照れ隠しで赤くなった彼の耳がとても可愛いなって想いました。傘も方便、とてもほっこりしました。
春は出逢いと別れの季節とはよく言いますが、同時に体験した出来事が脳裏に深く刻まれる季節のように思います。 舞い落ちる花びらを眺める度に思い出される事は、決して楽しい事ばかりでは無い。でも一方で、成就出来なかった想い人の幸せを願う事も、春らしくてとてもいいと思いました。皆さん、桜には色んな想いがある。
理想と現実は違うとはよく言ったもので、作中のパターンがまさにそれ。理想の相手ををポテチのフレーバーに例える展開に思わず吹いちゃいましたが、でも確かに言われてみると個性的なのがいっぱいあります。ガツンとスパイスの効いたもの、ピリッと香辛料の効いたもの、ほんのり甘い香りが鼻腔に広がるタイプもあったりして。でもその中で、長く飽きの来ない理想のうすしおタイプを求めている時に『どう?のり塩も悪く無いだろ?』と諭すような展開に思わずエロキュンしました。恋愛に味覚を絡めるのは反則です。
こんな表現をすると筆者様に怒られそうですが、でも僕から見た作中のヒロイン『冬実』への正直な印象です。 読みながらつい感情移入してしまうのですが、こんな事がどうして言えないの?どうしてこのタイミングを逃すの?等々、もどかしいほど不器用な冬実ですが、でも本当に大切な場面では、見る者を驚愕させるほど、相手の気持ちに踏み込む真っ直ぐさがあります。 タイトルにもある『狡猾』と表現されるクールヒーロー英二ですが、でもそんな狡猾様に、少し不器用ながらも揺るぎ無い気持ちを伝え続ける強さを見て、恋ってやっぱりいいな……と染々感じさせてくれる素敵な作品でした。 それと、恋愛模様ばかりに目が向きがちですが、でも一方で心地よく展開される家族愛も必見です。秋君いい味出してました。
『うわ~ガキ』『うわ~オヤジ』10代には10代にしか出来ない事があるし、40代には40代しか出来ない事もある。過去を愁う事はしない主義。だけどたまには、あの頃は楽しかったな~などと負惜しみを言う事もあったりして。社会人にはとかく『常識』と言う物が付きまといますが、でもどんな年齢になっても、どんなに取り繕っても、誰しも求める物はいつもシンプルな『好き』のひと言。作中の彼女は、そんな『好き』にやっと巡り会えたのだと思いました。
短編で終わらせるのが勿体無いほど今後の二人の行く末がとても気になる終わり方。作中に登場する問題発言の話ですが、気になる異性に対して自分が蔑まれてる場合は痛いけど、でも逆に好意を持って貰えてる場合は誉め言葉になるような気がします。言葉は使いよう。