ヴィジュアル系バンドが好きなわけでも、ギャルでもない、特に派手な系統に分類される方ではない私が、無性に舌にピアスを開けたくなったのは、高校一年生の冬だった。 一応言っておくけれど、心が病んでいて、自傷行為の代わりにピアスを開けようと思い立ったのではなくて、理由も無しに急に舌ピアスが魅力的に見えてしまい、そう思った次の日には、ピアスを開けてくれる病院に足を運んでいた。 待合室で随分待たされた後、ゴム手袋とマスクをした看護師さんが目の前に座って、色々と説明をしてくれた。 「はい、ではいきますね。力抜いてくださいね。」 ガシャン。 というピアスガンの音と共に、肉が切り裂かれるような妙な音、感覚がした、ような気がする。 ───痛い。 「大丈夫ですかー。喋れますか。」 という看護師さんの問いに対し、滑舌の悪い間抜けな返事しか出来なかったけれど、私の心はとても満たされた。