紅 憐さんのレビュー一覧
君から私が好きな花とお菓子が送られてきた まだ覚えてたんだと感心するものの、お礼なんてしません。だって君がそれを予想しているだろうから。 きっと電話がかかってくるに違いないと思っている彼に電話をしても、おもしろくない。 だから焦らす。かけてやらない。一晩でも二晩でも、いくらでも。彼には有限だけど、私には無限の時間があるのだから。たくさん焦らしてあげるのがいいと思う。 そうして君が、電話がかかってこないことにがっかりするか……もしくは忘れてしまった頃に、電話をかけてあげる。 きっと彼はこう言うんだろう。 「もう2度と掛けてこなくていいからな」 だから私は、待っていたくせにと言ってやるのだ。
作品そのものはとてもおもしろかった。時空郵便という、時間を超える手紙が、物語にどんな意味を、どんな影響を与えるか、……あるいは否か。未来か過去かを変えるかもしれない一手、いや一通を、読者もわくわくしながら読める。 だからこれは、欠点というよりも要望である。 時空郵便配達人に手紙が届いてもおもしろいと思った。どれかの話と話がクロスしてもいいのではと思った。せっかくの短編集である。そういう遊び心屋仕掛け、設定そのものをさらに利用した意外性を用いれれば、読者はさらに食いつくのではないだろうか。 エンターテイメント性にメッセージ性も持ち合わせている作品。文体はそこまで軽くなく、また堅すぎず読みやすい。 続編を期待する声に、私も加わろう。だから星はまだ、三つにしておく。
そういう作品があります。この場合、ドーナツかもしれない。 怖い話を読んだとき、もしそこに、おまじないの方法が載っていたら。試してみたくはなりませんか。私はなります。 そしてたぶん、私は今度ドーナツを買ってきて、その穴を覗くでしょう。 覗いた先に、なにがあるか。 簡単な話です。 ただ見えます。そこにあるものが。 たぶんそれが日常の風景。きっとだれもが見ているもの。だから仮に、穴の向こうになにが見えたにせよ、私は驚かないでしょうし、「ふぅん」と、落胆も驚嘆もないままドーナツをかじるんです。 穴はもうそこにない。見えるものもない。 でもひょっとしたら、そんな私を見ている人がいるかもしれない。 ドーナツの、穴越しに。
それくらい甘い。甘いったら甘い。でも、あんまりにも心地よい甘さ。 恋をするのはエネルギー。胸の内側にぽっと灯った恋心は、淡いピンクの蕾のよう。さて、どんな恋の花が咲くのかな。 氷の女神に凍えずに、しっかり育てよ恋心。彼女の顔は無表情。だけど心は氷じゃないんだよ。旅人のマントを脱がすのは、あったかい春の日差しだっけ。そういうぬくもり、大事です。 オフィスでは、カップいっぱい砂糖を入れた紅茶を飲みながらとはいかないでしょうが、空いてるお時間にはゆったりどうぞ。 私は、一足先に、ごちそうさまでした。
毒にも薬にもならないという言葉を知ってますか。 大抵は貶し言葉ですが、それが、褒め言葉として適用されるならば、この作品でしょう。 作者は言っています。「一部」だと。たしかに断片的、極地的、そして明らかに足りない“描写”……。 いや違う、だから、コレは、断片なのであって、ここに書いてあることに意味は……あるのか、ないのか。 それを考えるのは読者です。読む前に意味のわかる物語はない。読んでも意味がわからない物語はある。 決めるのは読者。レビューに囚われず、自分で意味を見いだせますか。 そこに、有意義な時間が生まれるか、倦怠感が迫るかは、読者次第。
と、物語を振り返ると思うことはありませんか? そういえばあれはどうなったんだろう。あの時のあれは?これは?うん?あれ?ちゃんと解決されたっけ? そういうのがきちんと解消されるのを、オチと言いまして……あ、みなさまご存知のようで。 ならその点、この作品は太鼓判を捺します。えっ、私なんかの太鼓判じゃ疑わしい?ならば読んでみましょうよ、はい百聞は一読にしかずよ! とりあえず、中古ゲームショップの激安ワゴンの中に埋もれてる聞いたこともないようなゲームを、まあ暇潰しに買ってみるかぐらいの気持ちで読んでみれば、終わった頃には恐ろしいほどハマってる――ハマったからには罠(オチ)が待ってると、こういうわけですので。 ささ、軽い気持ちで読んで重たいパンチを食らいましょう。
有名な人物を使うには、それに負けないストーリーが必要なのです。 読者に、「結局有名人の名前を肝にしてるだけか」と思われたら終わりという、両刃の剣。流行りのイケメン俳優を主役にしただけで視聴率が伸びないドラマと同じです。 歴史のお勉強に少し触れそうな作品でしたが、それが楽しく読んでいけるか?そこが肝心でした。小説は教科書とは確実に異なりますし、仮に「楽しく学べるお話」だとしたら、これにはエンターテイメント性が足りない。 だれもが知っている人物の名前を使うほどの物語だったのか? それが気になり、そして「役不足」だと感じました。一歩で日本を縦断できる巨人に、百歩かけて東京から埼玉まで行ってください、というような物語。 全体的に感じる、「キャラのすごさを使いきれないもったいなさ」。 知識の豊富な作者だけに、非常に残念でした。
古株とはいっても、そのまた一部かもしれない。 が、私が親しんでいる多くの作家さんが、この作品を評価している。 ずっと手を出す機会をうかがい、手を出してもしばらく、感想もレビューも書けなかった。 この作品に漂うのは激動でも哀愁でもなく、疲労感かもしれない。 気だるく、優しく、適度なぬくもりと柔らかさのあるなにかが、けれど重たく背後からのしかかり、首に腕を回して抱き締めてくる――そんな、心地のいい疲労感。 決して悪い意味ではなく、この作品を読んだ時、私は疲れた。心地よい疲れ方だった。きっと主人公に影響されたのかもしれないし――もしかしたら、私の感じ違いかもしれない。 この作品がまた、静かにでも密かにでも、次の読者へ読み次がれていけばいい。 それだけはたしかで、ということは、名作と言えるんじゃないか。 星をけちる気さえ起こらない。
怖さは、視覚に訴えかける怖さと、精神に訴えかける怖さとに分かれる。私の定義だ。この作品はどちらも読むことができる。 ただ、視覚的にも精神的にも、恐怖の深度が浅く感じた。見た目のグロさが視覚的恐怖なら、その描写にもっと粘性を出していいと思うし、剣山のように読者へ突きつけ、作品そのものをもっと劇物と化してほしかった。精神的な恐怖も同様。 ホラーとしては確立されているし、作中繰り広げられる様は、やはりホラーだ。 ただ、恐怖の深度も展開も〝読める〟。 もしも作者がこの作品で不安を抱くとしたら、ホラーなのだから「ちゃんと怖いか?」という根本的なことだろう。その点は「ちゃんと怖い」。が、怖いことが怖いように書いてあるとも言える。 ならこの作者は、怖くもない風景をホラーに変貌させられるだろうか。 筆力・ストーリーの実力はある。だから、文章自体から滲む恐怖がほしいと感じた。
小説を書く前には、エネルギーを充填します。 私は特にそう。アウトプットの前のインプット!これ大事。 そんな時、恋愛なら恋愛、ファンタジーならファンタジーを読んで、脳みそを切り替えます。 で。 そんな私がこれを読んだ時、「あ、来た」と。 恋愛脳カムヒアッ!と(笑) 彼を想う少女。彼を想うからこその、少女がんばり。早起きも、料理も、彼のためならがんばれる。だって彼に、喜んでほしいから。 笑顔になってもらえたら、ありがとうって言ってもらえたら、きっとそれだけで世界は幸福一色。 ひだまりというタイトルの通りのあったかさ。和やかさを感じられる、いいエッセイです。 うん。めちゃくちゃ素敵♪
ずいぶん、ずいぶんずいぶん前に読んだんですよ、この作品。 たしかまだ数人しか読んでないくらいのPVの、レビューの一本もない時に。 で、読み終わった当初からずっとレビューを書きたいレビューを書きたいと思ってて…… けれどお気に入り過ぎて、感想すら書きにいけず、いや、もう、なんて言っていいのか。 つまり紅 憐はこの作品が大好きです!それでいいじゃないかっ!! 星!?五個でも六個でも七個でもつけちゃう! それくらい紅 憐がおすすめします! いや、私が言ったって大したこたぁないですが、でも、私のイチオシ!! さあ、アナタもぜひ読んで! あれこれ宣伝文句やレビュー文を考えるより、率直におすすめしますから!
作品を読んでいくと、表紙にあった言葉や、タイトル、冒頭に使われていた単語を振り返ることがあります。 この作品もそういう仕掛けのあるひとつ。 少女が求めていたのは旅立ってしまって帰ってこない彼の姿なのか、それとも彼の与えてくれる安らぎや、その上での自己肯定や存在意義だったのか。 いやあえて、そのすべてなのでしょうきっと。 母なる大地とはよく聞くものですが、少女にとって大地は母よりも、恋人のたくましい腕や、信頼感などを連想させるのでしょう。 この人に寄り添っていられることが幸せで、この人に頼っていられれば満足な、そんな、一輪のタンポポ。ダンデライオン。 私も包み込まれたいこの世界観。味わってしまった包容力。見せつけられたのは主人公の感情。 タイトルを振り返る頃に、作品の持ち味がたくさんの花となる。
私がこの作品を読んだのは、去年の六月頃だった。 読んでいる間に、何度となく主人公の女性に感性を揺さぶられ、この作品にレビューを書きたい! という衝動に駆られた。 のだが…… それから一ヶ月、二ヶ月、三ヶ月……半年、八ヶ月と時が過ぎてしまった。 いったいどんなレビューなら、この作品の女性が抱いた感情や思いを伝えられるか…… それを何度も読み返しては考察してみたが、うまくいかない。 とにかくひたすら、「この作品にはレビューを書きたい!」という衝動が募った。 それほどインパクトのある8ページで、それほど私好みの8ページだった。 ぜひだれか、私よりも上手に、この作品の本質を、まただれかへ伝えるレビューを書いてほしい。 まいった! と伝えるのか、私の精一杯の、苦肉の策である。
まず目を見開く。必要以上に見開く。 そうすると少しずつ血走ってくるのだが、そんなことをしても他人からは「だから?」という反応しか得られない。 目を見開いた。血走った。だから? いや、意味はないかもしれないが、ある。とりあえず目は血走ったし、ついでに言うなら、自分の中の獣の片鱗のようなものも感じられる。 うん? 獣の片鱗を感じてどうするのだろう。意味? あるのかないのか。 定かなものよりまずは息を整えておこうかと思う。そう深呼吸だ。 ついでに少し回想してもいい。ファンタジーだリアリティーだ。オスカーを飾っただれかを自分に投影するのも悪くない。 さあそろそろ息は整った。 行こうか。
全長およそ100メートル弱。 強酸のブレス。刃を腐食させる粘液に、底の知れない体力。なによりその狂暴性。 突然変異を遂げた竜は、世に世に恐怖を撒き散らす。 聞こえるだろう東の地より。 禍々しく狂った竜の雄叫びが。 討竜の剣が銘にかけ、その首を跳ね落とそう。 灼熱闘志の血族が、少女の想いに呼応する。 異世界痛快ファンタジー。 王道発動冒険譚。
魔法が飛び出して剣が交錯する。そんなファンタジーではない。身の回りでも起きているはずだ。 たとえば、どうしてもほしかったチケットが手に入らなくて落胆していた。 そこへ、すっかり困り果てた友人が。悩みを解決してやると、友人は「よかったらこれ」となにかを差し出してくる。 それはなんと、自分がほしかったチケットではないか。聞けば、友人は恋人と行こうと思ったが、恋人の都合が悪くなってしまった。だから使ってくれと。 そんなことがあったなら、偶然や奇跡というファンタジーではないだろうか。もちろん、これはただの例。 ファンタジーを書くのは難しい。なにがどこからファンタジーなのか、どんな風にファンタジーなのか。 少なくとも、魔法や剣、吸血鬼など流行りものは出てこない。 それでもこれはファンタジー。心あたたまるファンタジーだ。