夏木エルさんのレビュー一覧
読み終わり、雨上がりのカエルになったような気分です。 雲の去った青空を見上げると、悲しいのに、なんだか悪くないような。 大満足のドラマチックな短編でした!
深い傷を負った男女が出会い、賑やかで温かな日々を過ごしていく中、互いに救い救われる物語。 読み終わったあとは読み手も救われた気持ちになり、二人、いや三人とともに幸せになれた気がすることでしょう。 家族愛が大切に描かれている中でも光る、大人の男性の色気へのときめきにすっかり夢中になってしまいました。 確信犯め……!(とハートを飛ばす)
幾度の恋文のやりとりで、ゼロから育っていった艶子の恋心。 恋愛初心者らしいテンパりや浮き足立つ様子に、過去の恋を思い出します。 登場人物たちそれぞれの人となりや、心情の描写が丁寧で、読みながら彼らが頭の中でいきいきと動いていました。 後半、アキに向かって綴った気持ちを投げつけ、飛ばすあのシーン。 切なく、激しく、映画のワンシーンのようでお気に入りです。 顔をくしゃくしゃにして叫ぶ艶子が、鮮やかに浮かび、読み終わったいまも焼き付いています。
読んでいて胸が痛くなるのに、同時に心が澄んでいくような。 そんな物語でした。 サクもレイも圭都も、みんなひたむきで愛おしくて、だからたまらなく切なくなってくる。 作者の晴虹さんがあとがきで、全力疾走で完結とおっしゃられていましたが、物語の中の彼らも全力で駆け抜けていました。 読み終わったいまも、空をゆびさす彼らの姿が脳裏に浮かんだまま消えません。 空をゆびさして。 サクの指の先にはいつだって、レイの笑顔があるんだろうな。
「じゃあなんでキスしたんですか」って、 タイトルを主人公と一緒になって言いたくなりました。 もどかしい。 答えがほしい。 納得ができる答えをください、森崎課長! 主人公と一緒にドキドキしたりモヤモヤしたり、素敵な男性ふたりにはさまれときめいたり。 それから彼の意外性に笑ってしまったり。 たくさんの楽しみが詰まったオフィスラブでした!
三十路手前の独身女。 意識するのはやっぱり結婚、そして出産。 結婚はしたくないわけじゃない。 むしろしたい。 でも誰でも良いわけじゃなくて、出来れば好きな相手と恋愛して結婚したい。 条件だって当然つけたい。 安定した職業で、収入は少ないよりは多い方が良くて、 顔は良ければそれに越したことはなくて、スタイルも出来れば(以下略) あとハゲてないと更に良い。 妥協は少ない方が良いけれど、そんなことを言っていられるほど悠長には構えていられないこともわかってる。 危機感はあるけどがっつきたくはない。 なんとも中途半端。 でもそれが多くの三十路手前独身女の本音だ。 婚活じゃなくて婚カチュ。 理想と現実の間でもがきながらの婚カチュ。 その先に見つけるのは妥協の旦那様? それとも理想の王子様? 間をとって、妥協の王子様……?
この物語には音が溢れています。 タバコが燃える音、 微かに揺れ瞬く音、 笑顔のこぼれる音、 涙が頬をつたう音、 悪夢に泣き叫ぶ音、 現実を嘆き憂う音、 彼女を愛し抱く音、 自分を許し歩む音、 優しきエゴイストが紡ぐ音と物語を、ぜひ味わってみてください。 気だるげな世界に身を投じれば、 あなたもきっと、数多の音の虜になります。