若林はしるさんのレビュー一覧
終始に渡る軽快なノリが、読者を笑いに誘い、鮮明な描写にも注目したいコメディ作品。 年頃の男女を良く捉えており、そしてその層に照準を合わせた少しエッチな内容は、ドキドキワクワクを感じさせてくれる。 笑いやエロス以外の所々に作者の趣味であろう表現が見え隠れする点が微笑ましい。 ニヤニヤと変に笑える長編を読みたいのであれば一読する価値あり。
視点を切り換えて、二者の想いを感じられる作品。 過去に記された思い出が長い時間を飛び越えて、再び記されていく記録の恋物語です。 テンポの良い文章と同調し易い心理描写がとても上手く、視点を切り換えた事で細かい表現が際立ってくる。 読み終えた後は、「良かったね!おめでとう」と素直に思え、優しい気持ちにさせてくれます。
一人称視点で進行する本作は、自己意識を持つ事の大切さを描いた考えさせられる作品です。 支えられる側は誰かに支えられて自己を保ち、支える側は誰かを支える事で自己を保つ。 ただ、それは誰かに依存しているだけで、本当に自己意識なのか? しかしそれよりも、そんな相手がいる事が幸せなのかも知れませんね。 周囲の人々の有り難さに気付くお話です。
人により解釈が変わる、少し深い意味を持たせてある作品。 “世界と言うものが何なのか?”と“警告者の善か悪か?”について触れているものと私は感じました。 読む事で考える場を与えてくれるので、一読してみては?
小さな子供の命に対する想いと、それによって学ぶ優しさがよく描かれた作品です。 終始、一人称視点で進行する本作は、見る方向によりセリフ進行とも取れますが、深い表現を廃した事で逆に未熟な子供らしさが表れています。 そこに“ある”毎日が、急に“ない”となる無慈悲を感じて頂きたい。
未成熟な少女の想いと、過去に尾を引く大人の想いが絡み、読者の心をくすぐる淡い恋物語。 上手く起承転結をまとめ、テンポの良い流れが秀逸。 定番の設定ですが、それを飽きさせず楽しませる技術が詰まっている作品です。 しかしながら、心理描写があまりにも淡々とストレートに感じられ、“友人から得た嬉しさ”と“想い人から得た嬉しさ”の差が分かり難いのが惜しい。 既存ケータイ小説作家が足りない技術の例に漏れず、修辞技法の不足が問題。 これを抜け出した者がケータイ小説作家の上級者となるでしょう。 星は2.5を四捨五入で3つ星。 初心ケータイ小説作家にも読ませたい一作ですね。
柔らかい印象が尻上がりに感情を膨らませ、意外性を伴いながら、最後は余韻を引く良い作品に仕上がっています。 ケータイ小説ならではの気軽さと、基礎を押さえた進行は従来小説の読者からしても見事と思える。 欲を言うなれば、文の装飾をもっと美しいものにして欲しいと感じます。 修辞技法から、時の表現と映像の広がりを明瞭にすると更なる良作に化けるかと。 野いちご作家の中では上級クラスの技能に惚れ惚れしました。 今後とも注目させて頂きます。